サザナミインコ/手にステップアップ

最初のご相談時点では、9か月になるサザナミインコさん。
ご相談の内容はこんな感じでした。

クリッピングされていて飛べない状態でお迎えしました。
お迎え当初、よくわからなくて手で捕まえていたせいか、数日経つ頃には手を見せると全力で逃げるようになってしまいました…。今は一切手や指には乗ってくれません。 攻撃的ではなく咬んだりもしませんし、放っておけば段々近寄ってきてそのうち肩には乗ってくれる関係性ではあります。ご褒美も手から食べてくれて、おしゃべりもしてくれます。
今のままでも十分可愛いけれど、健康診断等、お出かけ時にキャリーに入ってもらう事を考えると、出来れば腕くらいには乗ってくれるようになるといいなと思っています。

他の鳥種と暮らした経験がある人でも、サザナミインコさんを初めてお迎えしたら戸惑う方が多いようです。それくらい他の鳥種にはないサザナミインコさんの謎行動(誉め言葉)が、飼い主さんを混乱させているケースが多々あります。

ご相談時の様子

過去の経験から手は苦手、、、という感じではありましたが、手をとても怖がっているというほどではないことが観察できました。サザナミインコさんの方はどうやって飼い主さんと接していいかわからない状態でもあり、また、飼い主さんの方もどうやって距離を縮めていったらいいのかわからないという両者「どうしたものか??」という様子でした。

スタート地点としては、ご褒美を手から直接受け取ってくれる地点からだということと、ちょっとした飼い主さんの動きを修正するだけで、一気にお互いの距離が縮まるのではないかなという印象です。

目標と行動の処方箋(抜粋)

目標 手や腕にステップアップ

[方法] ご褒美をもつ手に問題なく近づいてきてくれますし、ステップアップしてもらいたい手を出しても後ずさりすることなく近づいてきてくれるので、あとは飼い主さんの無意識の動きを修正していただくことにしました。ご褒美の粟穂に対する反応は抜群だったので、これをご褒美として使っていくことにしました。ただし、サザナミインコさんは、消化速度が速いことやその食性から、シードを食べ過ぎると粒便(穀粒がすり潰されず、不完全または完全な状態で便に混入した状態)となる場合があるので、シードの与え過ぎには注意が必要です。

ポイント
  • 鳥さんの方から受け取りに来てもらうという点が大切で、鳥さんがあっちこっちに動き回っている場合、鳥さんの動きに合わせてご褒美を差し出す位置もあっちこっちに変えないようにします。

鳥さんは基本的に長い時間集中してくれないと思います。鳥さんがアチコチ動き回るのは通常運転かと思いますが、鳥さんの動きに合わせて、ステップアップしてほしい手やご褒美を鳥さんの目の前に移動しないようにします。左のイラスト(ヘタでお恥ずかしい…)で言いますと、✕印のところ、つまり鳥さんの前に前に手を動かしてしまうと、鳥さんはますます手を避けようとしてしまうことが多くなります。

〇印のところ、鳥さんから少し離れた位置(最初は遠すぎずでも近過ぎず)にステップアップしてもらいたい手を置いてご褒美も同じ位置に見せて固定します。10秒くらい待っても近づいてこなかったら一度手を引っ込めて、再度トライ。2~3回くらい試しても鳥さんが近づいてこなかったら時間をあけて再トライするか、それでも反応がない場合は以下の点を見直してみます。

①ご褒美の価値について見直す:上記のイラストのようにアチコチ動き回る鳥さんに興味を持ってもらうためにはどうするか。ここで威力を発揮するのがNo.1のご褒美となります。ただし、いくらNo.1のご褒美であっても、鳥さんが満腹状態だったり、常にエサ入れに入れてある存在ではご褒美の威力(価値)は発揮できなくなってしまいます。

②ステップアップしてほしい手をどのくらい受け入れてくれているか見極める:ご相談のサザナミインコさんは、ステップアップしてほしい手の存在に対して、後ずさりしたり怖がったりする様子はありませんでした。なかなか近づいてきてくれない場合、ステップアップしてほしい手をそえない・見せない状態で、ご褒美を持つ手のみからスタートする必要があります。

そして、ステップアップしてほしい手(下記の画像は左手)の露出具合で、鳥さんの様子がどう変化するかを観察して、怖がらない・逃げない位置が左手のスタート地点となります。

↑①左手ががっつり見えている。

↑②左手は指のみ見えている。
↑③左手は指の先のみ見えている。

画像は、テーブルの上で取り組んでいる様子ですが、鳥さんがケージの上や床の上、あるいは止まり木スタンドの方がリラックスしている場合は、適宜場所を変えていただけたらと思います。ご相談のサザナミインコさんの場合、床の方が動きやすそうだったので、床の上に左手をべたッとつけた状態で試していただきました。

例えば、③がスタート地点だとすると、少しずつ①に近づけていきます。場合によっては、5mmずつ指を移動する必要がある場合もあるので、鳥さんを観察しながら試していただけたらと思います。

※ 鳥さんのスタート地点が、手からご褒美を受け取ってくれる段階にない鳥さんの場合は、さらに細かいステップが必要となります。ここではご説明は割愛させていただき、別の記事にてご紹介させていただきます。

最終的に飼い主さんの観察力と実践の勝利

トレーニングを続けていただき、飼い主さんの観察によっていろいろ工夫していただいた結果、最初のご相談から約半年後のサザナミインコさんは、全く違って見えました。飼い主さんの手に全く躊躇なくのれるようになっていて本当に同じ鳥さんかと思うくらいでした。

これも飼い主さんがあきらめずに適切な方法でトレーニングを継続して、サザナミインコさんとの関係性を築き上げてくださった成果だと確信しています。

お家の鳥さんで似たようなお悩みのお持ちの方、鳥さんにも個性があるので、全く同じ内容のトレーニングという訳にはいかないかもしれませんが、今回の事例をご参考にしていただけたらと思います。

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