人によって鳥さんの態度が豹変 vol.5

手からご褒美を受け取ってくれないところからのスタート

vol.4では、No.1以外の人の介入頻度が下がることで鳥さんがオンリーワンになってしまう可能性があるケースをご紹介しました。No.1以外の人の手から食べ物を受け取ってくれるだけでも、スタート地点としてはかなりいいと思いますし、その関係性を継続していただくことでオンリーワンにはならない状態を維持できるかもっといい関係性が築けるのではないかなと思っています。
今回は、No.1以外の人の手から直接食べ物を受け取ってくれないところからのスタートをご紹介いたします。この方法は、人に馴れていない鳥さんに対しても取り入れることができるアプローチ法です。

手からご褒美を受け取ってくれない理由は?

「手から直接食べ物を受け取ることができない」と言っても、鳥さんがこのような状態になったのは理由があるからこそだと思われます。例えば、これまでの経験から、人側は無意識であったかもしれませんが、鳥さんにとっては人の手は怖い!イヤなことをするもの!という経験によるものや、人と接する機会があまりない状態でお迎えされた鳥さんなど様々だと思います。

いわゆる”荒鳥”と呼ばれる人に馴れていない状態の鳥さんをご縁があってお迎えして、「きっと時間が解決してくれる!(時が経てば馴れてくれるだろう)」という希望を抱いている飼い主さんも少なくないと思います。確かに、まずは人を含む環境に馴れてもらうことは必要です。できれば、時間だけでなく鳥さんとの関係性を積極的に築いていけるのもトレーニングであり、系統的脱感作法を用いていきます。

系統的脱感作法とは、ストレスの強い場面を設定し段階的に恐怖反応を打ち消していく方法です。ある行為、例えば人の手に対して嫌悪感を抱いている状態の鳥さんに、系統的脱感作を用いて不安や恐怖を取り除く作業をスモールステップで取り組んでいくことになります。この「段階的」や「スモールステップ」というのがキーワードで、鳥さんの様子を観察しながら進めていくことになるので、初めて取り組む人にとっては想像以上に小さなステップとなる場合もあります。
今回は、手や人に対して恐怖心を抱いている鳥さんが、この恐怖心を取り除いていく方法ですが、この系統的脱感作法は、初めて見るモノを怖がったり、おもちゃで遊んでくれない鳥さんに対しても、小さなステップでアプローチしていく時に用いることができます。

1.スタート地点を探る

vol.1~vol.4まで「人によって鳥さんの態度が豹変する」というテーマでご紹介してまいりましたが、この時もやはり現在の鳥さんの状況がどのような状態か、つまりスタート地点を把握するところからスタートしたのを覚えていらっしゃいますでしょうか。

そして今回も同様に、鳥さんとの関係性がどんな状況かを観察してスタート地点を把握するところからスタートしていきます。

今回は、人の手からは食べ物を受け取ってくれない状態であり、鳥さんが大好きなものを把握していることを前提とします。
*鳥さんが大好きなものが把握できていないような状況、例えばお迎えしたばかりの時期の場合、時間をかけて何が好きかな?の部分を観察していただけたらと思います。
*大好きな食べ物が分かったらこの大好きな物は普段のエサ入れには入れずに、「人の手からしか出てこないスペシャルなもの!」という存在にすることで、人の手(あるいは人自身)は怖い存在じゃない!むしろ大好きなものが現れる素敵な存在だ!ということを伝えていきます。なので、大好きな食べ物が把握できたら、エサ入れに入れた状態にはしません。(通常のエサ(シードやペレット)は、ケージに入れた状態です。)

2.スタート地点を探る具体的な方法

【目  標】スタート地点を探る
【ゴール①】ケージのすぐそばに飼い主さんがいても問題なく大好きな食べ物を食べてくれる
【ゴール②】ケージ越しでご褒美を受け取ってくれるようになる
【最終のゴール】手から直接食べ物を受け取ってくれる(さらにこの先にステップアップできるようになるなど)

①大好きな食べ物をケージ越しで見せます(*1)。近づいてきてくれない状況だと思いますが、5秒ほど待ってから、「エサ入れに入れておくから食べてね~」みたいにケージの中に設置してあるエサ入れにこの大好きな食べ物を入れてその場を立ち去ります。
【ポイント】*1の時に、①食べ物をもつ手は動かさない、②「こっちこっち!」などと声掛けをし過ぎない、③差し出す位置は鳥さんの目の前にしない。

②ケージから立ち去った後は、目の端くらい(ガン見しない)で鳥さんを観察。そして、どのくらい飼い主さんがケージから離れたら、エサ入れに入れた大好きな食べ物を食べ始めるかを確認します。この「鳥さんがエサ入れに入れた大好きなものを食べ始める」=「現段階で鳥さんが安心できる距離感」がスタート地点となります。
以下のイラストで言いますと、ケージからA地点まで飼い主さんが離れたら鳥さんが食べ始めるとします。そしたら、A地点がトレーニングのスタート地点となります。鳥さんが食べ始めてくれるまで時間がかかる場合は粘る必要はありませんので立ち去ってもOKです。①~②を繰り返す内に、この距離ならすぐに食べ始めてくれるというのが分かるようになると思います。鳥さんによってはケージから飼い主さんまでの距離が1mの場合もあれば5mの場合もあったり、あるいは、鳥さんの視界から人が消えないと食べてくれない場合もあります。

③A地点の飼い主さんの動きとしては、鳥さんを観察する必要はありますが凝視しないところからスタートとなる場合もあります。目の端っこで鳥さんの動きを捉える感じです。もちろん、鳥さんによっては、ある程度距離があればばっちり見られていることが分かっても平気!な鳥さんもいるので状況に応じて対応をお願いします。鳥さんがこれならOKだよというサインは、大好きなものを食べることができるかどうかが判断基準です。
*ご褒美となる大好きな食べ物基準でお伝えしていますが、その距離なら大丈夫!と鳥さんが判断してくれているかどうかは、通常入っているエサを食べることができるかどうかについても確認はできると思います。

④①~③を繰り返していきますが、③の段階で目を合わせると食べてくれない/目を合わせた途端食べるのをやめてしまう場合は、目のはしっこで見ていた状態から少しずつ顔を鳥さんの方に向けていきます。距離はA地点のままですが、最終的に視線が鳥さんと合っていても食べてくれるようになったらいよいよ距離を縮めていきます。

⑤①の後に上記イラストのB地点、つまりA地点よりもケージに少し近い位置でとどまってみてエサ入れに入れた大好きなものを食べてくれるかどうかを観察します。A地点とB地点の距離は、鳥さんによっては一気に離れても(=ケージに近くなっても)OKな鳥さんもいますが、数センチ単位で移動する必要がある場合もあります。まさにスモールステップですね!
さらに、このB地点でも④のように視線が合ってもOK/視線が合ったら食べませんなのかを確認していきます。

⑥①を繰り返しながら、最初のゴールとしては「ケージのそばに飼い主さんがいる状態で、エサ入れに入れた大好きな食べ物を食べてくれる」まで、距離をスタート地点AからB⇒C⇒Dのようにケージに近づいていくことになります。もちろん、B⇒C⇒Dの間は決まった距離ではないかもしれませんし、数センチの移動の時もあれば、思ったよりケージに近づいてもOKとなる場合もあるかと思います。飼い主さんとしてはすぐにでも鳥さんと仲良くなりたい!とはやる気持ちもあるかもしれませんが、鳥さんのボディランゲージを尊重しつつ進めていただけたらと思います。

そして、最初のゴール「ケージのすぐそばに飼い主さんがいても問題なく大好きな食べ物を食べてくれる」の状況になったらさらに次のステップへ!

とは言え、上記のケースで数々のトレーニングを行ってまいりましたが、ケージ越しに鳥さんの大好きなものをケージ内のエサ入れに入れた後に、鳥さんに背を向けた状態でケージのすぐそばに立っていたらすぐに食べてくれたこともあります。その地点から顔や体を鳥さんの方に向けるというステップを踏むことも多々ありました。アオメキバタンさんの場合、そうこうしている内にケージのそばに背を向けて立っていたら、ケージの隙間から足をのばしてお尻(私の)を触ってくるようになるまで数日しかかからなかったケースもあります。本当に鳥さんによって様々なので、鳥さんのペースに合わせて進めていただけたらと思います。

文字だけだとイメージしづらいかもしれません…。かえって、わかりづらくなっていたら申し訳ありません。後日、画像を追加できるようにしていきたいと思います。

●トレーニングを行う前に鳥さんの健康診断をお勧めします。
●怖がりの鳥さん/人に馴れていない鳥さんの場合、ケージの置き場所は鳥さんが落ち着ける場所(ケージの2面が壁に接しているなど視覚的バリアがある、窓や家電製品のそば以外など)をお勧めします。

今回はここまでです。

次回vol.6は、【ゴール①】ケージのすぐそばに飼い主さんがいても問題なく大好きな食べ物を食べてくれるの次のステップ、【ゴール②】ケージ越しでご褒美を手から受け取ってくれるようになってもらう方法をご紹介していきたいと思います。

アイキャッチ画像はKoi & Bei Bird Comics | Facebookより使用許可をいただきました。感謝です!

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