こんにちは!とり部の柴田です。
鳥さんの咬みつき改善や発情抑制、ダイエット、信頼関係の構築などなど、飼い主さんからの個別相談を受けています。ご相談にてご提案したことを実践していただくのですが、その後は飼い主さんと鳥さんのペースがあるので、こちらからその後どうですか?どんな様子ですか??などとおうかがいすることは基本的にグッと我慢しています。
このくらいのタイミングでご報告いただきたいですという期日からだいぶ過ぎてしまった場合は、さすがにご一報はさせていただいていますが、このパターン以外は気になっても

ダメダメ!
急かすような印象を与えてはいけない!
と飼い主さんからご報告が来るまでひたすら我慢するというお決まり事を自分に課しております。
でも、つい最近、このルールを破って、飼い主さんからのご連絡を待たずに、気になって気になってこちらからご連絡をしてしまいました💦
鳥さんのご相談を始めてまもなく20年、、、ほぼ初めてだったと思います。
X(Twitter)でもチラリとお伝えしました、過緊張や恐怖がトリガーとなり痙攣や早い開口呼吸になる文鳥さん。約2か月後に迫る飼い主さんの入院をどう乗り切るかについてご相談を受け、一緒に作戦を立てました。
結論から申しますと、飼い主さんは約1か月の入院から無事退院できて、文鳥さんも元気に楽しく過ごすことができたそうです!よかったです!
今回はこの文鳥さんと飼い主さんの取り組みについてご紹介させていただきます。
文鳥さんに限らず、同じような状況の鳥さんも少なくないと思います。
鳥さんによって状況は様々ですし、もしかしたら身体的な部分に原因があるコもいるかもしれません。とはいえ、神経的なものなのか脳に問題があるかまで特定するのはむずかしいとも聞きます。
時間をかけて適切にアプローチすれば同じような結果になるとは限りません!
でも、少しずつ少しずつ、鳥さんの状態とペースに合わせて小さい課題をクリアしていくことを遊びの一環としてみるとほんの少〜しでも良い変化を引き出せる場合もあるかもしれません。
今回の取り組みは「もしもの備え」であり「鳥さんの心の準備」とも言えます。
飼い主さんに気持ちはあったとしても、物理的にお世話ができなくなってしまうことも可能性としてはゼロではありません。いきなり鳥さんを取り巻く環境が変わってしまった!という状況は鳥さんには理解できませんし、すぐに順応するには無理があるでしょう。
でも、日頃から遊びの一環で、心も身体も強く、突然の環境変化にも順応しやすくなってもらうための鳥さん側の心の準備という目線で日々接していただけたらいいなと思っています。
文鳥さんを守れ!大作戦
まずはこれまでの経緯や鳥さんのことをじっくりおうかがいするところからスタート。
・文鳥さんは、過緊張や恐怖がトリガーとなり痙攣や早い開口呼吸になるとのこと。
・部屋を移動する、キャリーを見ただけでも、同様の症状が出てしまう。
・となると、お家からの移動はどうやら難しい…。つまりどこかに預けるには準備期間が足りない。
・たとえ準備期間がたっぷりあったとしても、過緊張性の発作が身体的なことであればトレーニングでどうこうできるレベルではない場合もある…。
などなどいろいろお話をおうかがいし、だからと言って投げ出すわけにはいかない!ということで、できるところからとにかくやってみようということになりました。
飼い主さんの入院期間中…
►文鳥さんが元気に安心して、できれば楽しくすごしてもらう。
►飼い主さんが安心して治療に専念してもらう。
これらが目標です。
カギはご協力者
幸いなことに、飼い主さんの周りに準備期間も含めてご協力者がいたことでした。
さらには、飼い主さんは応用行動分析学(ABA)を学んでいらっしゃっているという点もメリットだったかと思います。
職場の方とペットシッターさんにお世話をお願いする方向で、約2ヶ月かけて準備を進めることに。飼い主さんと綿密な計画を立てました。
大まかな流れをご紹介いたします。

初対面の様子

うちの文鳥のことですが、本日、世話をしてくれる人たちに初めて自宅に来てもらいました。
彼女らに部屋に入ってもらうと、体を細くして(ケージの中で)あちこち飛んでいる状態から2-3分後に軽く過緊張性発作が起きました。(*1)
そのため人間には一旦部屋から出てもらいましたが、5分ほどで落ち着いたので、ケージと距離を取りながら再度入室してもらいました。(*2)
その後は発作は起きず、途中からはブランコに乗ったり餌を食べたりできていました。
今後も少しずつ距離を縮めていけたらと思います。
初対面で、ここまでできれば十分だと思いました。
*1)の時点でケージ(文鳥さんのケージ)からどのくらいの距離だったかは不明ですが、もし、他にお部屋があれば文鳥さんとは違う部屋にご協力者の方に入ってもらい、扉越しにほんの少しだけ様子がうかがえるような状況が作れると初対面のハードルがグッと下げられるかと思います。
このような都合の良い間取りばかりではありませんし、他にお部屋がない場合、鳥さんから一番離れたところで様子を見ることが第一段階かと思います。この時、初めて会うヒトは立った状態かしゃがむか、あるいは座った状態がいいのかは鳥さんの様子を観察してご判断いただけたらと思います。
私が対面でご相談を受ける時、鳥さんが同じようなタイプの場合、病院の診察室くらいの広さだとしたら部屋のすみっこにしゃがむ方法を取ると、緊張したりパニックになったりということは避けられました。大丈夫そうだなと思ったら次は椅子に座ります。※鳥さんにもよりますのでご参考程度に。
*2)鳥さんに落ち着いてもらう時間は、みんなでじーっと鳥さんを見つめるのはNGです。仲良くなろうとアピールしたり手を振ったりは論外です(お気持ちは分かります)。この時間でできることは、飼い主さんと話したおす!これに限ります。飼い主さんとお話する時も、鳥さんをがっつり見るのではなく視界の隅っこに入る程度にして、様子を観察する感じです。
飼い主さんの入院までの取り組み
入院まであと2日の時点で飼い主さんからご報告いただきました。

お世話を依頼した3人が自宅に何度も足を運んでくれたお陰で、文鳥さんも3人に慣れて、自分から腕や手に乗ったり餌を食べたりすることができるようになりました。また、世話の仕方についても説明し、実際にやってみてもらいました。(*3)事故に気を付けて注意深く動けば、おそらく大丈夫だと思います。
*3)説明だけでなく、「実際にやってもらう」ことが何よりも大事だと思います。特に鳥さんに慣れていないヒトにとっては、経験則としてないことをするわけなので、ひとつひとつ実際にやってもらうことをオススメいたします。
鳥さんの方からご協力者の方の腕や手に乗れるようになったのは本当に安心ですね。
しかも発作なし!
飼い主さんが鳥さんのペースに合わせて進めてくださったおかげです。
時間設定を毎回2時間程度とし計6回行ったそうです。
対面1~2回目
ケージから出さずに人がいることに馴れてもらう。
鳥の様子を見て、ケージ越しに餌を与えてみる(鳥と人の手の距離を取れるキビ穂を使いました)。
※初回は入室に過緊張性発作(過呼吸)が起きました。
対面回数は今回の文鳥さんのケースです!
ケージ越しに鳥さんの大好きなものを与えるタイミングが、今回は1~2回目でできていることに逆に驚いています。
他の鳥さんの場合は、もっと会う回数を重ねてからケージ越しにあげてみるという流れになるかもしれません。
ケージ越しにご褒美を与えてもいいタイミングの見極め方
□鳥さん(ケージ)とヒトが同じ空間にいても落ち着いている。
□鳥さん(ケージ)がヒトに対して興味津々で見てくれている。
□鳥さん(ケージ)がヒトがいる位置に対して、ケージの前面にいるなど近いところにいる。
□鳥さん(ケージ)がケージの中で動き回れている。
□鳥さん(ケージ)がエサを食べたり、おもちゃをつついたり遊んだりできる余裕がある。
□ヒトが鳥さん(ケージ)に近づいても距離をとらない。
⇒近づく時は1歩あるいは半歩ずつくらいのペースで鳥さんの様子を確認しながら。
□ヒトがご褒美を持つ手を動かしても驚いたりしない。
まずは飼い主さんがケージに近づいている状態で、他のヒトは離れたところから少しずつ近づくイメージです。
鳥さんとできるだけ早く仲良くなるためのポイントとしては、鳥さんの鳴き声や動きをヒトの方が真似すると親和性が作りやすいかと思います。離れた位置から鳥さんの視界に入ればできます。派手な動きやマネしてるからこっち見て!のような動きはNGです!
次に、ケージ越しにご褒美を上げる時の注意点
□鳥さんの方からご褒美に近づいてきてもらう。鳥さんのクチバシにご褒美を持っていかない。
□鳥さんが移動しても、ご褒美を差し出す位置を動かさない。
□ご褒美を揺らさない。
□ご褒美を差し出した時に、じーっと鳥さんを見つめない。
□名前など声をかけ過ぎない。
□穂類の場合、飼い主さんが持っていて鳥さんが食べている時にそっと他のヒトに交代でも可。
□すぐに受け取りに来てくれなかったら一旦ご褒美を引く。そしてもう一度。2~3回繰り返しても受け取りに来てくれなかったら、ご褒美はケージ越しにエサ入れに入れてもOK。
*ご褒美を受け取ってくれない理由が、もしかしたらお腹がいっぱい、ご褒美に魅力を感じない、ご褒美の価値が高くない(どうせ後で食べれるし!)などあるので、ご褒美を変えてみてもいいかと思います。
対面3~4回目
前半は人間だけでおしゃべり、後半は好物のカナリーシードを手にのせて(*4)、ケージを開けて文鳥さんが出てくるのを待つ(*5)。
*4)ヒトだけおしゃべりに加えて、食べ物を食べたりするのもいいかと思います。手にのせなくても、テーブルやお皿に置いておいてもOK。
*5)とにかく無理や強制は禁物です!鳥さんの意思とペースで進めていくことが大切です。
プラス私(=飼い主さん)の世話の仕方を見てもらう。
ケージの外からできること(水換え、敷き紙交換)は実際にやってもらう。
対面5回目以降
はじめの30分程度は人間だけでおしゃべり。
その後ケージを開ける。
この頃には餌がなくても腕や手に乗るようになりました。また、世話を通しでやってみてもらいました。
ペットシッターの方について、鳥はあまり経験がないとのことだったので実際に動きながらその場その場でアドバイスをしたそうです。
最初は、鳥さんとの距離感が分からない様子が見受けられたそうです。それでも、これまでの経験のおかげか、文鳥さんは初対面のペットシッターさんの手の上で餌を食べることができていたそうです。お見事です!
ペットシッターさんの中には鳥さんに慣れていない方もいらっしゃるかと思います。
そんな時は、ぜひ飼い主さんから教えてあげていただきたいです。そうすることで、今後、信頼してお願いできるペットシッターさんとの関係性が継続していけるということになります。
人同士の相性もあるかと思いますが、よほどでなければ、ぜひ鳥さんのことを教えてあげていただけたらいいなと思います。
今後も継続は大切
そろそろ退院の時期では?と勝手に思い込み、飼い主さんからの連絡を待たずに「お体と文鳥さん、いかがですか?」とフライングでご連絡をしてしまいました💦
反省しています…。
そして、退院しましたのご連絡を飼い主さんからいただきました。

本日やっと退院しました。
当初考えていたより長くなってしまい、1ヶ月入院していました。
文鳥さんですが、私の入院中、食欲もあり、怪我や病気をすることなく過ごすことができました。 これも一重に柴田さんのご助言のおかげです。どうもありがとうございました。
お世話してくれる人たちも、細やかにやってくださいました。体重も計ってもらっていたので、1g増えたものの、ちゃんと餌を食べていることが確認でき、体重が増えすぎないように餌の量を調節することもできました。
また「おいで」で飛んで来ることや、フォージングの話も事前に説明し、放鳥中にそれらを使いながら、運動したり遊んだりしてもらいました。
気になったこととしては、入院してすぐの頃に何日か羽が抜けたことと、2週間くらい経った頃に尾羽を齧っていたことです。羽が抜けるのは数日で終わり原因は不明です(換羽ではなさそう)。
羽を齧るのは幸いひどくならずにすみましたが、今後も気をつけて見ておこうと思います。
リハビリはまだまだ続きますが、家に帰ることができてほっとしています。
この度は本当にありがとうございました。
いえいえ!
飼い主さんがこれまでABAについてたくさん勉強したり、それを周りのヒトに適切に伝えてくださったおかげです。
羽を齧る行動もあったとのことですが、今回に関しては理由が明確です。ひどくなっていないとのことなので、神経質になり過ぎない程度に観察をお願いしました。
お世話をしてくださった方々とも文鳥さんとの信頼関係を築けて何よりです!
こんな↓感じの画像が送られてくれば、飼い主さんも安心して治療を頑張れたのが分かりますね。




目標に掲げていた
►文鳥さんが元気に安心して、できれば楽しくすごしてもらう。
►飼い主さんが安心して治療に専念してもらう。
ことが達成できたのではないかと思います。
今回、文鳥さんにとっていろいろな経験をしてストレス耐性がアップできたからこそ、食欲も落ちずに、飼い主さん以外のヒトたちと楽しく過ごせたのではないかと思います。
ストレス耐性がアップしたからと言っても維持できない点が今後の課題かと思います。
また他のヒトと会う機会が減ってしまうと、1から(場合によっては2からかもしれませんし、ゼロからかもしれません)スタートになる場合もあります。
もしもの備えとして、周りのヒトのお力を借りることもあるかと思いますので、その時はぜひ頼っていただけたらいいなと思います。
ただし、鳥さん側の心の準備は大切です!時間もかかります!
もしもの事態が起こらない方がベストですが、幸いなことにもしもの事態に遭遇しなかったとしても、鳥さんの社会化(家族以外のヒトに定期的に会う)や敢えて生活リズムを崩してみたり、遊ぶ場所や寝る場所を変えてみることことは毎日の暮らしの中で、鳥さんにとってよい刺激になると考えます。結果的にストレス耐性がアップして、鳥さんを取り巻く環境が変化した時に順応しやすくなるのではないかと思います。
発作までいかなくても、驚かせないように、パニックにならないようにと息をひそめて生活していくよりも、ほんの少しでも鳥さんも飼い主さんも暮らしやすくなるといいなと思っています。そのためには、適切な方法を知って実践することが必要だと考えます。
今回の文鳥さんの取り組みは、飼い主さんと文鳥さんに合わせて取り組んだ内容です。
鳥さんによっても症状は様々だと思いますので、今回の内容は鳥さんの状態やペースに合わせて、ご参考にしていただけたらと思います。