鳥さんにまつわるあいまいな数字と言葉

あとで連絡するね!

と言われて、「あとで」っていつ?となったりしませんか。

ある人にとっては、「数時間後」「今日中」もしかしたら日にちをまたいで「明日」になることもあるのではないでしょうか。

個人的には、自分が「あとで」と使う場合は「その日の内」という意味で使っているかな…、いやいや「またあとで!」の時は日にちをまたいでしまうかも??などと、自分自身でも定義はあいまいなんだなと改めて気付かされています。

こういうこともあって、鳥さんのご相談を受ける時にはできるだけ具体的な数字や言葉を使うように心がけています。
「あと1cm横に動かして~」、「鳥さんの今の目線から3cmくらい高めに~」などなど。
もしも「あと少し横に~」「ちょっとだけ上目に~」と言われても、自分はこういうつもりで使っているという認識と、飼い主さんの認識とでは同じではないケースがほとんどなのではないかなと思うからです。これは自分自身もちょっとした訓練が伴います。うっかりするとついついあいまいな数字や言葉を使ってしまいます。

今回は、鳥さんにまつわるあいまいな数字と言葉についてご紹介していきたいと思います。結局は、ケースバイケースのことも多々あるかと思いますが、ご参考にしていただけたらと思います。

それって具体的には・・・? ~あいまいな数字と言葉集~

1.病院でよく聞く言葉

獣医師
獣医師

①もう少し体重を落とした方がいいですね。

②老齢期に入ると~。

③しっかり保温して~。

なんだかわかるようなわからないような・・・。家に帰ってきてから「あ~ちゃんと確認しておけばよかった…。」と思うことはありませんか。

①「もう少し体重を落とした方がいいですね。」

「もう少し」あるいは「もうちょっと」は日常会話でもよく登場する言葉ですよね。鳥さんの体重にかかわる場合は、具体的な数字を確認することをお勧めいたします。
体重を落とす必要がある場合、「もう少し」=2~3gかな?と思い込みで判断してしまうと危険なこともあります。

反対に、「もう少し体重を増やした方がいいですね」の時も、何gまでならOKですか?と目安を確認すると飼い主さんも安心なのではないでしょうか。

「もう少し筋肉をつけた方がいい」の時は、数字での確認は難しいかもしれませんが、何を基準にして判断したらいいですか?と確認していただくと、胸筋のこの部分が~みたいに説明してもらえるのではないかなと思います。

②「老齢期に入ると~」

鳥さんは何才から「老齢期」と言えるのか、ご存知でしょうか。

獣医師に確認したところ、その鳥種の寿命と言われる年齢の半分から老齢期だよと教えてもらったことがあります。
なるほど~と思いながらも、その鳥種の寿命自体も飼養本やネット情報によってまちまちだなという感じも・・・。難しい点ではありますが、寿命と言われる半分の年齢に差し掛かったら、より一層気にかけてあげる必要が出てくるという認識でいることが大切になるのではないかと思います。

③「しっかり保温して~」

保温が必要になる時とは、鳥さんの体調が崩れた時になるのではないでしょうか。こういう時は、保温は本当に大切ですよね。この場合、だいたい何度くらいというのは病院では言ってもらえるのではないかなと思います。

ここで気を付けていただきたいのは、例えば32度くらいで保温してということや「しっかり」という言葉を忠実に守った結果、いつのまにか温度が上がり過ぎてしまいかえって鳥さんが暑がってしまうケースもあるようです。温度(数字)を守りつつも、密閉しすぎて温度が上がり過ぎないようにすることや、鳥さんが暑がっていないかを観察してあげることが必要です。温度の管理(調整)についてはサーモスタットを使って、温度の上がり過ぎや下がり過ぎを調整すると安心かと思います。

2.ご相談時の会話から

飼い主さん
飼い主さん

①本に書いてある体重の範囲内だから大丈夫です!

②シードはいろいろとミックスシードを与えています。

①「本に書いてある体重の範囲内だから大丈夫です!」

鳥さん個別相談ではすぐにトレーニングに入る訳ではなく、鳥さんの飼養環境や生活環境をしっかりとヒアリングさせていただくようにしています。その中で、鳥さんの体重に関することは必須項目です。体重測定を毎日(あるいは数日おきに)行っているという飼い主さんが多く、とても素晴らしいなと感じています。そしてこれに続く質問として、「その体重は適正範囲内ですか?」の質問に対して、「本に書いてある体重の範囲内なので大丈夫です!」という回答がほとんどのように感じます。

本に書いてある「セキセイインコなら〇g~〇g」のような体重の表記は本当に目安でしかありません。セキセイインコと言っても骨格が小さいコや大きいコなどなど実に様々です。なので、目の前にいる鳥さんの適正体重を知るには病院で獣医師に確認していただくことをお勧めしています。

一方で、数字だけに注目してしまうと大切な部分を見落としてしまうことにもなります。たとえば、30gの鳥さんがいたとします。脂肪ばかりついていて筋肉がついていない30gと、筋肉がしっかりついている30gとではどちらが健康と言えるのか…大きく変わってきますよね。

本やネットに書いてあるこの鳥種だったらこのくらいの体重という表記は参考程度にしていただき、ご自身の鳥さんの適正体重は病院で獣医師に確認していただくことをお勧めいたします。

②「シードはいろいろとミックスシードを与えています。」

「いろいろ」や「様々」は、あいまいな言葉の代表的存在なのではないでしょうか。と言いながら、日常的にいろいろ使ってしまいますよね。あ!

ご相談となるとこの部分はあいまいにはできないので、しっかりと「例えば・・・?」と必ず確認させていただいています。これは、病院に行った時も意識して使っていただくと、限られた診察時間で獣医師に明確に伝えられるのではないかなと思っています。

たとえば・・・
「昨日から元気がなくて・・・」
これを少し具体的に⇒「いつもはケージから出したらすぐ飛び回るんですけど、飛び回らなかった」など。
鳥さんの体調変化に関しては、「なんとなく」のように飼い主さんの直感的なこともあるかと思います。この場合は具体的な描写はむずかしいかもしれませんが、具体的な描写ができるようであれば極力意識していただけると病院のスタッフさんにとってはよりイメージしやすくなるのではないかなと思います。

トレーニングにおいては、「誰が聞いても話している人と同じイメージを思い浮かべる」くらいの具体的な描写が必要になってきます。具体的に描写しなくちゃと思うと観察力がアップすることになるので、これは日常的にも大きなメリットになるのではないかなと思います。

3.トレーニングにまつわるあいまいな数字と言葉

最近では、鳥さんのトレーニングを教えてくれるワークショップなども以前と比べると多くなったなと嬉しく思っています。
鳥さん個別相談では、セミナーやワークショップに参加したけどうまくいかない…という方も数多くご利用いただいています。その中でもやはりあいまいになっている部分があるなと感じているので、補足説明的にご紹介していきたいと思います。

①ご褒美をあげるタイミングは3秒?

望ましい行動の直後に現れる報酬と行動を関連付けて、望ましい行動の出現率を上げていくのがポジティブレインフォースメント(正の強化)です。トリックを教える時に使われるトレーニング法ですね。

もちろん、トリックだけではなく、問題行動改善(鳥さんの方は問題だとは思っていませんが)にも用いる方法です。

上にも書きましたが、報酬(ご褒美)を与えるタイミングは、望ましい行動の直後です。

「3秒以内」ではありません。「3秒以内」と思うと、3秒経過するまでにご褒美をあげればいい!という認識になってしまい、これではタイミング的に遅いかなと思います。

極端な例ですが、咬まれた時にイタイ!というくらいのタイミングであれば、ガツンと鳥さんに伝わるかと思いますが、これはなかなかの反射神経を要しますね。

意識としては、望ましい行動から3秒以内にご褒美をあげる!ではなく、望ましい行動の瞬間にご褒美をあげる!くらいの認識で取り組んでいただけたらタイミング的に遅くならずに済むかと思います。

②1回のトレーニングセッション

1回のトレーニングはどのくらいの時間行えばいいですか?

今回の記事では、具体的な数字を明確にすることで独自の考えに偏ることを避けられたらいいなと思っていますが、明確にするとその数字にこだわってしまい本来の意図が失われるという落とし穴もあります。それが、この「1回のトレーニングセッションの長さ」です。

海外の記事には、「1回のトレーニングセッションはだいたい15分~20分くらい」と書かれているものもあります。実際に、鳥さんが15分もの間集中できるかと言われると難しいのではないでしょうか。もちろん、30分は余裕で集中できる鳥さんもいますが…。

「〇分くらいです」ということで、時間の方を優先して鳥さんの観察がおろそかになってしまう危険性があると感じています。

鳥さんが明らかに飽きてしまって「もうやらない!」ということをボディランゲージで伝えているにもかかわらず、「まだまだ!もっとやらなきゃ!」と飼い主さんがひつこくしてしまうとトレーニング自体が楽しくなくなってしまいキライになってしまうという、意図していない結果になることもあります。

このご質問については、
「特に決まった長さはありませんが、鳥さんが飽きてしまう前に一旦トレーニングを切り上げると次につながります。」
と回答しています。

ここにご注意!

「じゃあ、これができたら終わりね!」という目標を立ててしまうと、成功するまでトレーニングを繰り返してしまいそのうちに鳥さんの方が先に飽きてしまう、でも飼い主さんとしては成功させていいイメージ(?)で終わらせたいという思いからそれでもひつこく継続してしまう…結果的に鳥さんが「もうイヤ!」となってしまい、トレーニングがうまくいかないということも多々あるようです。

失敗してトレーニングを終えても大丈夫です!
トレーニングセッションの中で、成功・失敗を繰り返して、「こうすればいいことがあるんだ!(望ましい行動の時にご褒美ゲット)」という経験を少なからずしていれば、最後に失敗、つまりご褒美はなしの状態でトレーニングを終えたとしても、鳥さんはきちんと覚えてくれています。
そして、次のトレーニングの時に、見違えるほど上達していることもよくあるので、「成功したら終わり!」の目標設定は、とりあえず一旦忘れていただけたらいいなと思います。

③トレーニングの頻度

②と同様に、「毎日」とか「1週間に〇回」という設定ができないのがトレーニング頻度です。これはトリックなどの何かを教える分野に該当します。

確かに、トレーニングは毎日行った方が鳥さんも覚えてくれやすいとは思いますが、飼い主さんにもお仕事や家事などがある場合、「毎日」自分に課すことで義務といいますか負担になってしまうとトレーニングが楽しくなくなってしまいます。飼い主さんが楽しくないと鳥さんも楽しくなくなってしまうのでこれは避けたいと思っています。

トレーニングの頻度を訊かれたら、「毎日やらなくてもいいです。2日に1回、3日に1回のペースでも鳥さんは覚えてくれます。」という伝え方をしています。
個人的な経験としては、1週間に1回のトレーニングでも鳥さんはきちんと覚えてくれるということは実体験としてあります。

ここにご注意!

咬みつき改善、呼び鳴き改善など、問題行動(ひつこいようですが鳥さんは問題だとは思っていません)の改善に関しては、特定の時間だけやる、この日はやる!ということではなく、一貫したルール常に継続することが必要です。

④ご褒美のサイズ

望ましい行動の瞬間にご褒美(報酬)を与えることで、望ましい行動を覚えてくれるというトレーニングですが、このご褒美には鳥さんが大好きな食べ物を使うことが多いです。このご褒美をあげるという行為についても、実はあいまいなのかなと感じています。

ご相談時に、まずはどんな風にやっていらっしゃるのか飼い主さんと鳥さんの様子を観察するところから始めます。だいたい、ご褒美のサイズが大きいことがほとんどです。この「大きい」の表現も、頭の中に思い浮かべるサイズはまちまちなのではないでしょうか。ここでいう「大きい」とは、鳥さんが一口で食べきれないサイズのことを指します。モグモグと食べている時間が3秒以上続いたり、足でつかんで食べるようであれば、そのご褒美のサイズはトレーニングのご褒美としては「大きい」と言えます。

おいでトレーニング、ステップアップ/ダウンのトレーニングなど繰り返し・リズミカルに行うと鳥さんの行動が引き出しやすいかと思います。この時に、一回にあげるご褒美が大きいとトレーニングが間延びしてしまうといいますか、鳥さんの方もすぐにお腹いっぱいになってしまい、いくら大好きなモノでももういりませんということに。

ご褒美が食べ物の場合、具体的なご褒美のサイズをお伝えする場合は、鳥さんの鼻の穴くらいのサイズが最適です、とお伝えしています。

ここにご注意!

そこにとどまってほしい場合、例えば体重計にのってそこでキープ!キャリーに入ってそこで滞在!などの場合は、大きめサイズのご褒美の方が目的を達成しやすくなるかと思います。

以上、鳥さんにまつわるあいまいな数字と言葉でした。
まだまだあやふやな数字や言葉はあるかもしれません。把握しておくと安心な数字もあれば、数字でくくれないものもあり・・・相手は生き物ですし、観察をしながら臨機応変にというのが一番かもしれません。

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