野生の暮らしから学ぶ ~ヒント①地上での採食~

人と暮らす鳥さんの暮らしは、野生下での暮らしとは大きく異なります。
このことは、鳥さんと暮らす飼い主さんは十分に理解している事柄かと思います。
元々、野生下での暮らしに適応するために進化してきた鳥さんの体や思考を、人との暮らしの中でいかに心と体の満足度をアップさせるかがカギとなり、いわゆる問題行動(ひつこいようですが鳥さんの方は問題だとは思っていません)に発展させないことにもつながると考えています。

しかしながら、野生下での暮らしを100%、飼養下に持ち込むことは不可能ですよね…。だとするとどうしたら鳥さんの心と体の満足度をアップさせられるのでしょうか。

改めて、野生の鳥さんたちと、人と暮らす鳥さんたちの一日の過ごし方を比較して、ご家庭で再現できるヒントがないか探っていきたいと思います。

野生の鳥さんたちの一日

●睡眠:12時間以上
●活動:寝床から移動、営巣地探し
●群れの鳥たちと交流:3時間
●羽根のお手入れ:3時間
●餌探し+食事:6~8時間

熱帯に住む鳥さんの例。
毎日がサバイバル状態。

野生の鳥たちは自分たちでエサを見つけなければなりません。
飛んだり、齧ったり、つついたり、失敗したり、鳥さんたちはエサをみつけるためにとても多くの時間を費やしています。

一方、人と暮らしている鳥さんたちはこの真逆の生活を送っています。

人と暮らす鳥さんたちの一日

●睡眠:8~6時間
●活動:起きている時間:16~18時間
●食事:30~45分

起きている時間が長く、餌を難なく手に入れることができる。
おもちゃで遊ばない鳥さんであれば、そのほとんどの時間は羽根のお手入れに費やしている可能性がある。

人と暮らす鳥さんたちの多くは、1日に16~18時間も起きている時間があるにもかかわらず、飛ぶことや仲間とのふれあい、巣作りといった活動から隔離された生活を送っていると言われています。

また食餌や水が常にケージにセットしてあり、1日に必要な、あるいはそれ以上のカロリーを苦労することなく30~45分で摂取することができる状態です。

アメリカの獣医師によって行われた調査によると・・・

71%以上のペットの鳥たちに何らかの問題行動があるという報告がありますが、それはごく自然なことのように思います。むしろ29%に何の問題行動もない方が驚きだ。

と記されています。
フォージングやエンリッチメントといったより野生下に近い複雑な環境を与えることで、このような問題を緩和できると言われています。

野生での暮らしをヒントに

上記のような一日の流れを人との暮らしに持ち込むことは不可能ですが、参考にできる部分はあると考えています。上述のフォージング(採食行動)やエンリッチメントがそれです。

今回は、野生での暮らしの中から「地面での採食行動」について、市販のおもちゃや食べ物を活用してご家庭でも再現できる方法をご紹介させていただきます。ご参考になりましたら嬉しいです。

撮影:岡本勇太さん

こちらの写真は動物写真家の岡本勇太さんによってオーストラリアで撮影されたオカメインコ。
まず・・・かわいい!ですよね!
そして、この写真からもたくさんのヒントが。

まず、オカメインコやセキセイインコ、モモイロインコなどは地面で採食する「Ground Forager(地上採食者)」と呼ばれています。みんな真剣に地面とにらめっこしながらエサを探していますね。
この行動をヒントに、ご家庭でも地面でエサ探しをする行動が再現できそうなグッズを活用すると、食事に時間をかけて思考の刺激にもつながり、退屈な時間が減らせそうですね。

KAWAI もじゃもじゃ

Happy Holiday’s P2 PLAY PARK アスレチックネット

楽しそうなのがいろいろありますね!

そのままのサイズを受け入れてくれる鳥さんもいれば、怖がる鳥さんもいるかと思います。この場合、素材を切って小さいサイズからスタートすることで受け入れやすくなるかと思います。

上記に加えて、エサ入れに障害物を入れることでも地面で採食する行動は再現できるかなと思います。いろいろ組み合わせることで、今はこれでやる!次はこっち!という風に、鳥さんにとって選択肢が増えて思考の刺激にもつながってくれると思います。

鳥さんが素材をたくさん呑み込んでいないか、安全か、十分に観察をお願いいたします。

使ってみたいけど鳥さんが怖がる場合

やってみようと購入してみたものの、当の鳥さんが怖がって近づけない・・・
というケースもよくあることです。まずは、鳥さんにとって見慣れた存在にしてあげることと、この中にいいものがある!という関連付けを行うことが必要となりますのでその流れをご紹介いたします。

KAWAIの「うさぎの座ぶとん」を使って慣れてもらう過程をご紹介

①やはりここは、鳥さんが大好きなモノの力を借ります。大好きな食べ物をうさぎの座ぶとんの上にばらまきます。この画像ではそのままのサイズを使用していますが、座ぶとんを半分、あるいは1/4に切ったところからスタートしても大丈夫です。ただし、このうさぎの座ぶとんは切ってしまうとポロポロと分解が進んでしまうのでヒモで縛るなどしてもいいかと思います。

そもそも、下の画像のような距離にも近付けない場合、まずは飼い主さんが座ぶとんを触りまくって、鳥さんの警戒心を解くところからスタートとなります。時間をかけてゆっくりと。

物(おもちゃ)を鳥さんに近づけるのではなく、鳥さんの方から近づいてもらう!
ようにお願いします!

まこもさん家のエトちゃん、クーちゃんにご協力いただいた時の様子。ありがとうございます!

②下の画像↓では、粟穂の房を座ぶとんの中央あたりに置いていますが、最初は、座ぶとんに鳥さんがのらなくてもクチバシが届くところからスタートして、少しずつ、粟穂の房を中央へ移動して、鳥さんの足が座ぶとんにのるように誘導していきます。

③存在感があるので、画像↓のようにケージの側面に取り付けて、上の方に粟穂を置くという方法からスタートするのもいいかと思います。

④鳥さんが少しずつ慣れてくれて、こんな風に近づけても逃げないようであれば、距離を詰めるお手伝いをしてもいいかと思います。この時も無理に近づけるのはNGです。

地面での採食を再現する目的ではありますが、上記画像のように、うさぎの座ぶとんに限らず、置いた状態でもケージの側面にぶらさげた状態でも活用できます。側面に縦にぶら下げるとエサが落ちてしまうかもしれませんが、中にぐっぐっと押し込むことで落ちにくくなりあますし、エサをゲットするためにハードルも上がります。

次回は、こちらの画像↓からヒントとなるものをご紹介していきたいと思います。

撮影:岡本勇太さん

岡本勇太さんの写真集「インコのびのび オカメインコ・セキセイインコのオーストラリア野生生活」は鳥さんたちの暮らしのヒントやたくましさ、もちろんかわいさがもりだくさんの本です!

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