ある日の鳥さん個別相談〈オンライン〉の中で、飼い主さんとこんな会話が。
元々誰でもウェルカムだったのに、最近人見知りになりました。ショップにいた頃は接客を担当していたくらいだったのに。なぜでしょう?
この内容をTwitterでツイートした時にいただいたコメントに、なるほどな~そういう見方もできるのかもしれないな~と思いました。
今まですごく頑張って誰にも愛想良くしてきたけど、やっと自分が安心できる家ができて、もう頑張らなくていいんだ…って一息ついたというところでしょうか。そうだとしたらいじらしいですね。そして、今の飼い主さんの作ってくれた居場所がこの子にとって本当に心地良いんでしょうね😊
ショップにいる鳥は 生きていくための 処世術が有るのかなと感じます。 賢いですね。
行動を感情ではなく科学でとらえることで、動物が本当に求めているものが分かるというのが応用行動分析学の考えです。なので、鳥さんの本当の気持ちは鳥さんにしかわからないというのが前提となりますが、上記のコメントは頷ける部分があるな~と感心してしまいました。
応用行動分析学において、「行動は環境への反応である」と言われています。つまり、鳥さんの今の行動は自動的に出現している訳ではなく、鳥さんがこれまで経験した環境から獲得した学習行動であり、行動は、”いつも”、”すべて”、その動物(鳥さん)にとっての正解だと言えます。
つまり、こういうことですね・・・
問題行動だ!どうしてそんなことするの!
これまでの経験と実績から学ばせていただきましたよ。つまりこれが正解!
という感じになります。
鳥さんの行動が変わった理由とは?
まずは、ショップにいたころの環境と、お迎えされた環境とを比較してみたいと思います。
①ショップにいたころの環境
ショップでは、いろいろな人が行き交う環境だったため、初めて会う人に対しても抵抗がなかったと思われます。それが毎日のルーティンになっていましたし、その時、常同行動のようなストレスを現す行動は特に観察されていなければ、鳥さんにとっても楽しかったと言えるのかもしれません。
キーワードとしては、①毎日のルーティンになっていた、②鳥さんにとっては楽しい経験だった。これらから不特定多数の人が行き交う環境は当たり前になっていましたし、”慣れていた/適応できていた”と言えますね。
②お迎えされた環境
ご家庭にお迎えされたら、ショップほどいろいろな人が行き交うという環境は考えられないと思います。毎日会う人は限定されるかと思います。
毎日のルーティンの中に、いろいろな人と会う/触れ合う機会が減少した状態です。
その結果
現在の日常的な状況(②)に身を置くことで、お迎えされた環境に馴染んでくれていると言えます。ご相談時はすっかり「ここの家のコです!」感が増していました。一方で、いろいろな人と会う/触れ合う機会が少なくなってしまったことで、初めて・あるいは数回会ったことがあったとしても、鳥さんにとっては非日常的なイベント(①)に対して、徐々に慣れにくい環境に身を置いているとも言えるかと思います。
それでも、初めての人に対して、適切なアプローチで(場合によっては時間をかけて)、徐々に慣れていくことは可能です。しかし、滞在時間が短かったり、特にコミュニケーションをとることなく、鳥さんがその人に慣れる前に鳥さんの目の前から姿が消えてしまうと、また次に会った時はドキドキしている状態が続いているのではないかと思います。鳥さんはきちんと人を覚えられますが、心の準備もままならない段階で部屋から人がいなくなってしまう(帰ってしまった)と、次に会った時は「この人!覚えてはいるけどドキドキしてたんだよね、この人のことがまだ良くわからない💦」の記憶からスタートすることになるのではないかなと思います。
一方で、初めて会った時にご褒美を受け取ってくれない鳥さんもいるかと思います。受け取ってくれるけど、咬みつくパターンも考えられます。ご褒美は受け取ってくれたとしても、次に会うまでの時間が空きすぎると、また振り出しに戻って一からスタートという場合もありますので、鳥さんのペースに合わせて、心と体の距離を縮めていく必要があります。攻撃的な行動を見せる鳥さんの場合、飼い主さんがその人にご褒美の渡し方を教えてあげるなどのちょっとしたトレーニングに関するレクチャーをしていただけるといいなと思っています。
ストレス耐性
ご相談のテンジクバタンさんは、お迎えされる前と今とでは、環境が異なることから現在の行動にも変化が生じているといえるのは確かだと思います。つまり、ストレス耐性が下がってしまったからということも言えるかと思います。
ストレス耐性とは”ストレスに対して適応し、処理できるか・どの程度耐えられるかといったレベル”を意味します。
人で言いますと、元々の性格にもよりますが、経験値の向上でストレス耐性を高めることができると言われています。
例えば・・・
初めて人前で話すのは緊張する!けれど経験を重ねていくうちにだんだん緊張しなくなった/あるいは緊張の度合いが和らいだ。
⇒ストレス耐性が高くなった。
という感じです。
これは鳥さんにもあてはまると考えています。
いろいろな人に出会う環境下で最初はドキドキからスタートしていたかもしれません。幼鳥の頃からであればドキドキすらしておらず、それが当たり前の日常だと学習していたかもしれません。その環境に慣れるとドキドキ感が和らぐ ⇒ お客様からちやほやしてもらった結果楽しい!と感じる余裕も出てくる ⇒ ストレス耐性が高くなった状況だと言えるのかなと思います。
しかしこのストレス耐性、、、高くなったからと言って、環境が変わってもずっと高い状態をキープできるかといわれるとそうではないのが残念なところです。久しぶりに人前で話すことになった⇒緊張する!ような感じでしょうか。
テンジクバタンさんは、現在の飼い主さんにお迎えされて、毎日の暮らしの中で出会う人が限られた状況に慣れていき、時々知らない人に会うと警戒心もあいまって人見知りになってしまったのが今の状況なのではないかなと思われます。
ストレスについて
ストレスは与えない方がいいという意見もあります。体調を崩してしまうような激しいストレスの場合はこの意見にもちろん賛成です。
一方で、ストレスがない暮らしや一生ストレスと出会わない暮らしは不可能なのではないでしょうか。
だとしたら、ストレスを避けるのではなく多少のストレスに動じないような経験を重ねていく方が鳥さんにとっても飼い主さんにとっても生きやすくなるのではないかなと考えています。「ストレス」の言葉よりも、「いい刺激」の方が混乱を招かずに受け入れやすいかもしれません。目指すは心も体も強い鳥さんですね!
とはいえ、無理やりストレスを作ってストレス耐性を上げていきましょう!という意味ではありませんのでご注意ください。鳥さんによっては、本当に少しずつのアプローチが必要になっていきます。怖がり屋さんだから怖がらせないように接するのは大切かもしれませんが、ほんの少しのできた!の経験を積み重ねていくことでストレス耐性を少しずつ上げていくことができます。こういう場面でもトレーニングは役に立つ考えています。
今回はここまでです。
次回は、ストレス耐性の具体的な上げ方について、ご紹介していきたいと思います。
こちら↓ご相談後に疲れちゃってネムネムの様子のテンジクバタンさん。かわいすぎます!
頑張りましたね!
こういうオンラインでのご相談(知らない人の声が聞こえる!誰!?)もいい刺激になっていたらいいなと思います。