Writer: Yuri Takata
みなさま、はじめまして。ビジービーク&テイル 「いぬ部」担当の高田と申します。
いぬ部の活動がまだ本格発進していないので、ひっそりとゆるくゆるく、いぬ部のコラムを不定期で始めてみようかと思います。箸休め程度にお読みいただけると嬉しいです。
私が初めて「自分の犬」としてラブラドールのロビンを迎えたのは、今から20年近くも前の事です。「今日は見に行くだけね!」と妹と固く決意して行った個人のブリーダーさん宅。
帰りの車の中には真っ黒な子犬が妹の腕に抱かれてすやすやと眠っていました。これが私とロビンの始まりの日です。はじめて長距離運転をした日でもあり、高速道路と抜けるように高い秋の空を今でも覚えています。
さて、レトリバーと暮らしたことのある人ならおわかりだと思います。彼らの尽きることのない体力、飽くなき好奇心、ブラックホールのごとき食欲、全ての人が自分を好きに違いないという根拠のない自信、ボールへの猟奇的な執念、スリッパは破壊しなければならない、水には飛び込まなければならないという妙な刷り込み。行先もわかってないくせに引っ張り、愛情は飛びついて現すスタイル。
家族の誰もが、一度は散歩で転んでいました。母は散歩に行くことから早々に離脱。散歩で人や犬が歩いてきたら即回れ右、手はいつも甘噛みでひっかき傷だらけでした。土手の階段を歩いているおじいさんに飛びついた時には、「人生終わった・・・」と獄中生活を送る自分が脳裏に浮かんで気が遠くなりました。(無事でした)
もはや、散歩自体がストレスになりつつありました。
このままでは大変なことになる・・・
真剣に考え、躾教室に通うことにしました。とは言え、20年近くも前。「褒めて育てる」と「上下関係、服従訓練」がダブルスタンダードな時代でした。
良いことをしたら褒めて伸ばしましょう。引っ張る子にはジェントルリーダー(ハルティー)※1を。怒ってはいけません、あなたが群れのリーダーになりましょう。今振り返るとカオスです。けれど、一般飼い主の私には何が間違っていて何が正しいのかもわからない。それを疑問に思うこともなく一生懸命にやりました。ハーフチョーク※2も、引っ張った時のジャーク※3も。今振り返ると後悔しかありません。彼にとっては困惑の連続だったと思います。でも私はロビンを本当に大切に思っていて、ただただ、一緒にストレスなく暮らせる日が来ることを心から望んでいたのです。
犬という動物を知らなければいけない、何を考えているのか知りたい。そう思ってはじめて動物関係の資格を取ったのもこの頃です。
紆余曲折ありましたが、結果的に、ロビンは天真爛漫な子犬のまま成犬になり、落ち着いてきたかな・・と思った頃には可愛いシニアになっていました。
この頼りない母ちゃんを置いていくのは忍びない、と思ったのでしょうか。大型犬にしては長い17歳8ヶ月という歳月を私と共に生きてくれました。しっかり介護もペットロスも経験させてくれました。
長々と書いてきましたが、何を言いたいかと言うと、私も迷えるひとりの飼い主だったということです。ロビンと暮らしたかけがえのない年月の中、躾に悩み、迷い、介護に疲れ、それでも共に在ることが本当に幸せでした。真っ黒でツヤツヤの毛並み、ビロウドのような耳の手触り、肉球の匂い、目が合うと嬉しそうに揺れる尻尾、頭を私の胸にぐいぐいこすりつけて甘える仕草。思い出すと今も胸が温かくなります。
彼が私に教えてくれたことを無駄にしたくないという思いから、自分に出来ることを模索してまた一から勉強を始めました。勢いあまって、企業OLからペット業界に転身してしまいました。
この20年で、犬に関する様々なことが科学で解明され、アップデートされ続けています。
知識を得れば得るほど気付きと共に後悔も生まれますが、それも含めて、彼の教えてくれたことです。
だからいろんな人に知ってもらいたいと思います。
犬と良い関係を築くには、まず「犬」を知ること。その上で人の社会で生きる方法を教え、育むこと。
犬と暮らし、共に幸せに生きるために、飼い主も犬も一緒に出来ることがたくさんあります。
アドバイザーとして、少しでもそのお手伝いが出来れば私は本当に幸せです。
※1:ジェントルリーダー、ハルティー
引っ張り、吠え癖のある中~大型犬用の首輪で、首から鼻先(マズル)に繋がっています。マズルをぐるっと一周して、顎の下でリードを繋ぐタイプです。口は開くし物も食べることはできますが、強く引くと犬が首を痛めることがあります。適切な指導の下で使うことが必要です。
※2:ハーフチョーク
リードを引っ張れば首輪がギュッと閉まる首輪。一般的に、首に当たる部分が布や革、残りの部分がチェーンでできています。「ハーフチョーク」はある程度で締まらないようになっていますが、「フルチョークカラー」は引っ張れば引っ張るほど首が締まります。使い方を誤れば「負の強化」になってしまう場合があります。
(実際に私が使っていたのは一般的なハーフチョークではなく、チェーンの部分が布になっている「プレミアカラー」と呼ばれるものでした)
※3:ジャーク、リードショック
犬が引っ張ったり吠えたりしたときに、リードを緩んだ状態からぐっと勢いよく引いてショックを与えることです。