翻訳記事2:本当の真実:鳥の睡眠の必要性 by Pamela Clark

(2018年9月17日 Allopreenのブログからお引越し)

Pamela Clarkさん(獣医師、行動コンサルタント)よりご承諾いただき翻訳させていただいています。

アメリカでのやり方が100%正しいと言うことではないと思っています。記事を通じて、各ご家庭での環境や生活リズムの中で、様々な性格の鳥さんたちにとって何が最適な暮らしでありどうやったら鳥さんのQOL(生活の質)をあげられるのかのご参考にしていただきながら各ご家庭で応用していただけましたら幸いです。

Pamela Clarkさんのホームページ

「鳥は毎晩10〜12時間の連続した睡眠が必要です!」

あなたはこれを何回聞いたことがありますか?

この主題を研究するにあたり、ここにコピーしたこの文がそのままの言葉で、多くのウェブサイトで無限に繰り返されていることを発見しました。

スタンダードな定説への疑問

私はこの声明の妥当性に疑問を呈します。第一に、多様な種に適用するにはかなり広範囲な一般化であるということ。第二に、鳥に関しては私は「一般化をひどく嫌う派」です。

第三に、日照時間と睡眠の必要性は、ほとんどの議論で混乱し、問題の論点を曖昧にさせているように見えました。最後に、私は30年近く大型の鳥と一緒に暮らしていますが、10〜12時間の中断することがない睡眠を鳥たちに提供したことはありません。私の鳥たちは不十分な休息が影響で病気になったり問題行動を引き起こしたりしたことはありません。

この公言された必要性について、最もよく与えられる理由は、ほとんどのオウムは赤道領域を生息地としていることから、24時間の中で約12時間日光を浴び、12時間は暗闇であるということに由来しているようです。さらに、野生のオウムの観察者は、太陽が沈んだ直後に鳥たちは休息を開始すると報告しています。したがって、オウムは夜に約10〜12時間の睡眠を必要としなければならないという議論が導かれているということになります。しかし、これは論理的な議論と言えるのでしょうか。

まず、緯線と赤道がはっきりと記された世界地図(ここでは赤)を調べると、赤道の上と下の両方の地域が数多くの鳥の生息地となっていることがわかります。例えば、オキナインコはもともと、赤道より45度下、赤道と南極のほぼ半分に位置するアルゼンチンの地域で同定されました(Forshaw 1977、442)。

第二に、広範囲を旅して鳥に精通している人々によると、野生下では鳥は暗くもなく静かでもない場所にいると一般的に言われています。夜のほとんどの時間、月は夜空をある程度照らし、夜行性の動物も同様に動き回ります。これは、落ち着いた睡眠のために鳥が完全に暗くて静かな環境でなければならないという繰り返しのアドバイスを否定するようです。

私はまた、鳥が「怒りっぽくてイライラしている」、すなわち、睡眠時間が短いことで咬みつきやすくなるということも繰り返し述べられていることに気付きました(Womach, 2012)。十分な睡眠を取っていないことによって、鳥は「怒りっぽい」という仮定があります。私たち人間が睡眠不足から怒りっぽくなる傾向があるのであれば、これは鳥にも当てはまるはずです。しかし、人間と鳥は大きく異なる生物です。もし、鳥が「怒りっぽい」状態で従順でないなら、疲労が関係しているのではなく、トレーニング不足を反映している可能性が高くなります。よくトレーニングを受けた鳥であれば、疲れていようがいまいが、合図でステップアップなどの反応を示してくれるでしょう。

鳥の睡眠に関する科学に基づく根拠

ここでは表面上を見るのではなく、鳥の睡眠に関する興味をそそる科学的情報を見て、これはこの議論に役立つでしょう。第一に、鳥は長時間にわたってレム睡眠(最も深い睡眠状態)を維持しないように見えます。鳥類学ハンドブックに “…ほとんどの哺乳類とは異なり、レム睡眠期間は鳥類では短く、一部の種では潜在的な捕食者に対して警戒するために睡眠が頻繁に中断される。”と記載されています(Lovette 2016, 254)。

さらに、鳥類の睡眠研究では、すべての鳥類およびイルカのようないくつかの水生哺乳類が、一度に脳の半分だけで眠る能力を有することを証明しています。

「鳥の視覚系は、脳の半分に交差している。すなわち、各眼からのニューロンは、脳の反対側に伝わる。夜の間、半分の脳の睡眠を交互に変えることによって、これらの鳥は、片側の目を常に開けて捕食者に注意を払うことができて、同時に必要な脳の休息を得て、おそらく夢を見ているかもしれない」(Lovette 2016,254)。鳥は、捕食者から身を守るためにこの睡眠システムを進化させてきたのです。これは、よく眠るためには中断することなく、暗い環境でなければならないという標準的なアドバイスに重大な疑念を投げかけています。

また、渡り鳥が飛行している間に眠ることができるということが、現在の研究によって証明されています。シロハラアマツバメは一度に200日間空中に留まり、睡眠を含むすべての重要な生理学的プロセスを飛行中に達成できることを示唆しています。さらに睡眠は、移動および繁殖の間にいくつかの種において時々厳しく制限されることもあります。(Rattenborg et al, 2016)

就塒(鳥がねぐらにつくこと) vs 睡眠

鳥類学のケンブリッジ百科事典では、就塒と睡眠は2つの別々の活動として説明していますが、一方は他方につながっています。“すべての鳥が眠り、すべての鳥がねぐらにつく。これらの2つの用語はしばしば同じ意味で使われているが、実際には異なる意味を持っている。”鳥がねぐらについた時、これは単に眠る場所に移動したことを意味します。

いったんねぐらに入れば、睡眠はせずに羽繕いをしたり休んだり、群れのメンバーと相互に関わることを含む様々な行動に従事することができます。一日の長さに最も直接的に合致するのはねぐらに戻る時間とねぐらから出発する時間です。睡眠の長さはあまり関係してきません。(Brooke and Birkhead 1991, 145).  “ほとんどの鳥は、24時間中のおよそ8時間の睡眠サイクルだが、睡眠量に大きなばらつきがあり、同じ鳥種でさえも大きな季節変動があるかもしれない”(Brooke and Birkhead 1991、148)。この情報は、鳥は暗闇の長さとほぼ等しい時間、ねぐらにいることがありますが、必ずしもこの時間を通して眠っているとは限らないということを提言しています。

過度な睡眠はヨウムの羽毛障害行動(Feather Damaging Behavior)の危険因子に

もう一つの興味深い発見は、まったく異なる情報源から来ています。数年前にイギリスで研究が行われ、ヨウムと白色オウムの羽毛障害行動の危険要因が特定されました。研究されたヨウムのグループに関する2つの危険因子は、(1)所有期間の延長、(2)睡眠時間の増加でした。「12時間以上、夜間暗く静かで、睡眠を邪魔されない環境では羽根を抜く確率が増え、8時間未満の夜間睡眠と比べると7倍以上に増加した」(Jayson et al 、2014,250-257)

最後の情報は、徐波睡眠(SWS)とレム睡眠(REM)に関するものです。人間や鳥類も同様にSWSとレム睡眠の両方が出現します。しかし、哺乳動物におけるレム睡眠の症状は持続時間が何十分も続く可能性があるが、鳥のレム睡眠期間は10秒を超えることはまれであり、1日に何百回も発生します。(Lesku and Rattenborg 2014)

ねぐらにつく経験を提供すべき?

それではいくつかの常識について見てみましょう。鳥にとって本当に必要なものを特定するために、ねぐらにつくこと、睡眠、そして一日の長さの論点を用いてもう少し詳しく調べてみましょう。私は特にねぐらの概念に興味があります。今までこれはほとんど注目されていませんでした。睡眠の前にねぐらにつく能力は、鳥には非常に重要です。毎日、私の鳥たちからも観察できる行動です。私の鳥たちの行動のいくつかは一般的ではないと考えることができます。例えば、夜間、鳥たちみんなをケージには入れません。オオバタンは外に出しておくと破壊しまくるのでケージに入れます。しかし、私の4羽のヨウムとボウシインコはケージの外の止まり木にとまって寝ることを選んでいます。毎晩、電気が消える前に、寝場所となる止まり木で寝る体勢を整え1時間ほど過ごします。羽繕いをしたり、通常はまったりとしていますが寝ることはありません。それは睡眠の準備をする、彼らにとってとても満足のいく行動であるかのようです。私たちは野生の鳥のこのねぐらにつくという機能を推測することしかできません。ひょっとしたら、群れの絆を強固にすることに役立つかもしれません。眠りに入る前に周囲が安全かどうかを判断する時間であるかもしれません。もしかしたら、いつかは解明されるかもしれません。しかしながら、今のところは、睡眠用のケージの知恵とそれがどのように使われているのかについて疑問を持つべきでしょう。

完全に暗くすることができる別の部屋に第2の小さなケージを有するというこの習慣はかなり普及しています。私たちは、眠れない鳥を小さいケージに入れてすぐさま暗い部屋に入れると、このねぐらにつくルースティングタイムを奪っていないか、注意する必要があると思いませんか。このような環境を提供してあげるべきですか。私たちには分かりません。でも、この情報は少なくとも私たちの思考を広げるように導くはずです。

睡眠は鳥にとって必要

睡眠に関しては、上記の科学的情報はすべて、すべての鳥が毎晩10〜12時間の中断のない睡眠を持たなければならないという事実に疑問を投げかけています。真実は、私たちは実際にどのくらいの睡眠時間がそれぞれの鳥種、あるいはそれぞれの鳥のニーズに合っているのかについては分かりません。

おそらく、私たちが一緒に暮らす鳥について、どれだけのことが判っていないのかを覚えておくべき時なのかもしれません。親密性が必ずしも知識をもたらすとは限りません。そして、鳥にとっての必要なものについて、無条件で絶対的で明示的な言葉を、単に根拠のない考えを繰り返すことは害を及ぼすことになります。さらに、その睡眠に関する記述は頻繁に繰り返されており、私たちのビジョンを制限していました。それ以上の調査と議論への行き詰まりです。鳥の睡眠には何が必要なのでしょうか?「鳥のベストな肉体的、精神的健康のために何が必要なのでしょうか?」

一貫性と予測可能性のために努力を

私の経験上、一貫性と予測可能性が必要です。獣医師のFern Van Santは次のように賛同しています。「鳥の昼夜のスケジュールを一定のスケジュールで提供することが、睡眠の長さよりも重要です。」「毎晩、鳥に9時間または12時間の睡眠など、毎晩同じ長さの睡眠時間を与えます。鳥の睡眠がある晩は8時間、ある晩は12時間、そして次の日は10時間になると、そのバイオリズムは行動や健康上で支障をきたすでしょう」(Gordon、Rose 2018)

さらに、私たちは鳥たちのニーズについて私たちに伝えてくることを観察しなければなりません。若鳥やとても年を取っている鳥、病気の鳥は他の鳥よりも多くの睡眠を必要としているということは推測できるかもしれませんが、ほとんどの鳥は慎重に観察することで手がかりを伝えていることが分かります。この情報は、自分たちのニーズとバランスをとる必要があります。家庭内の社会的バランスは、すべてのニーズが考慮される場合にのみ達成されます。

したがって、あなたが午後6時まで家に帰らず、推奨される睡眠時間を守るために規則正しく就寝用のケージに6時30分に入れているとします。夜の12時間の睡眠の必要性よりも、鳥の社会的ニーズの方がずっと大きいかもしれません。もしあなたが、鳥を寝かしつけようとした時に抵抗するならば、スケジュールの再調整が必要になるかもしれません。一方、あなたが毎晩午後11時を就寝時間と決めて、鳥を寝かしつけるために一度(寝ていた)鳥を起こさなければならない場合、その鳥は早い就寝時間を必要としているかもしれません。夜間に自分の羽根を齧っている場合は睡眠スケジュールを見直してみてください。部屋にわずかな光が入るせいで鳥が午前6時に起きているけれど、あなたが起きるのが8時になる場合、その2時間は羽根を傷つけてしまう恐れのある最たる時間帯です。あなたが夜につま先立で歩き回ったり、冷蔵庫まで行くと鳥が目覚めてしまうかもしれないという恐れがあるから冷蔵庫に行くのはやめようと思っている場合、いますぐこれらを止めることができますよ。明らかに、鳥は十分な休息を取る能力にそのような中断を組み込むシステムを進化させてきたからです。

日照時間の影響

最後に、日照時間の長さの問題があります。私たちは、日照時間の長さの生理学的影響が、睡眠や行動および生物学的リズムにどのような影響を与えるかを知りません。しかし、私は屋内に住む鳥は、いまだ屋外との関係性があることを何年も観察してきました。それは日照時間の長さが鳥に重大な影響を与えるかもしれないということを意味しています。非常に多くの人がアドバイスをしてきたように、鳥たちのために生まれた場所の日照時間の長さを模倣してあげることが最適である、と私もそれは理にかなっていると思います。私たちは、鳥の生息地とそこの日光の量を調べることができるでしょう。それから、私たちは光を遮るような暗い部屋に鳥が寝るケージを置くことで、この環境を複製することができるでしょう。でも、これは本当に必要なことなのでしょうか。私たちはいつも鳥の適応性と柔軟性を素晴らしいと言ってきました。この論点について、私は古い格言に倣いたいと思います。「壊れていなければ、修正しなくてもよい」です。

しかしながら、日照時間の長さの増加や減少が生殖ホルモンの引き金になると考えています。アマゾン(ボウシインコ)やマコウ(コンゴウインコ)、ピオヌス(パイオナス)のような鳥たちは、春によく発情の行動を示します。一方、多くのヨウムや白色オウムは、日が短くなる時期にこの行動を最初に示します。これを考えると、繁殖期や極端な攻撃的な行動をコントロールするために、アマゾンやその他の鳥たちには、日の長さを人為的に減らすことは非常にうまくいくかもしれません。これはしばしば獣医師が推奨するものです。私の経験上、これはヨウムや白色オウムには通用しません。

最後に

もし、あなたの鳥にとって睡眠環境がうまくいっているようなら、そのまま継続した方がいいということになるでしょう。しかし、問題が観られるなど鳥のニーズに合っていないようなら、前述した情報を元にいろいろと試してみてはいかがでしょうか。あなたと、あなたの鳥にとって何がうまくいくかを見つけてください。個人好みのルールを適用するのではなく、あなたの鳥が何を必要としているかを発見するために観察をしてください。必要性があるのであれば、日照時間の長さを変えることを検討してみてください。あなた自身の常識を使ってみてください!


引用

Forshaw, Joseph. Parrots of the World. Neptune: T.F.H Publications, 1977.

  1. “How Much Sleep Does My Parrot Need.” Fixing Your Parrot’s Problems.15 Sept 2012. http://www.birdtricks.com/blog/how-much-sleep-does-my-parrot-need
  2. Lovette, Irby and John Fitzpatrick. The Cornell Lab of Ornithology Handbook of Bird Biology. West Sussex: John Wiley & Sons, Ltd., 2016.
  3. Rattenborg et al. Evidence that Birds Sleep in Mid-flight.” Nature Communications, 3 Aug 2016. < https://www.nature.com/articles/ncomms12468&gt;
  4. Brooke, Michael and Tim Birkhead. The Cambridge Encyclopedia of Ornithology. New York: Cambridge University Press, 1991.
  5. Jayson, Stephanie, David Williams, and James L.N. Wood. “Prevalence and Risk Factors of Feather Plucking in African Grey Parrots (Psittacus erithacus erithacus and Psittacus erithacus timneh) and Cockatoos (Cacatua spp.)” Journal of Exotic Pet Medicine 23 (2014), pp 250-257.
  6. Gordon, Rose. “The Science of Parrot Sleep.” https://www.petcha.com/the-science-of-parrot-sleep
  7. Lesku, John and Niels Rattenborg. “Avian Sleep.” Current Biology.<https://doi.org/10.1016/j.cub.2013.10.005>
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