(2020年7月26日 Allopreenのブログからお引越し)
Pamela Clarkさん(獣医師、行動コンサルタント)よりご承諾いただき、Pamelaさんの記事を翻訳させていただいています。
Pamelaさんの記事を通じて、各ご家庭での環境や生活リズムの中で、様々な性格の鳥さんたちにとって何が最適な暮らしでありどうやったら鳥さんのQOL(生活の質)をあげられるのかのご参考にしていただきながら各ご家庭で応用していただけましたら幸いです。
Pamela Clarkさんのホームページ
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今回は、いつものように、ただ翻訳文を掲載するだけでなく、実例紹介のところを一部穴埋めにしています。記事内容を読んでいただき、ご自身のアイディアも考えていただく練習にしていただけたらいいなと思っています。別の記事で、翻訳文全文を掲載いたしますので、そちらで答え合わせをしてみてください。
ただし、答え合わせと言っても、方法は一つではありません。それぞれの鳥さんに合った方法を探っていっていただけたらと思います。
『行動を修正する最も簡単な方法!』★穴埋めあり★ 2020.04.09

配偶者、同僚、子供、ペット、さらには害虫など、他の人や種の行動を変えるために、日々の大半が費やされているように思えることがあります。
スマホなどの画面を見つめるのではなく、子供たちに宿題をやらせるのに苦労している。お客さまに飛びかかるのではなく、犬に座っていてもらいたい。無害のカタツムリ駆除剤を探している。私たちは、雄叫びを上げたり、攻撃的だったり、羽を抜いたりするインコ・オウムにイライラしてしまい、1つの戦術を試し、次に別の戦術を試して止めさせようとします。同時に、野菜を食べさせたり、おもちゃで遊んだり、水浴びをさせたりもしますが、うまくいきません。
結果と罰
問題行動に関して、私たちの最初の傾向は通常、結果を見つけ出してそれを止めさせることです。さらに、その結果は、しばしば罰という方法を用いることになります。

宿題が終わらない場合スマホなどを取りあげます。犬が飛びついたら犬をケージに閉じ込めます。インコ・オウムが雄叫びをあげたら、鳥にスプレーで水を噴きかけるか、ケージにカバーをかけます。鳥が咬んだら、「タイムアウト」のためにケージに入れます。
なぜ私たちは行動を変えるために、結果に焦点を当てようとするのでしょうか。おそらく、それはとても見覚えがあると感じるからです。私たちは皆、計画の失敗や私たち自身の誤算からくるつらい結果を経験しています。指を何度も強く打ち付けることで、ハンマーを正しく使用する方法を学びます。失敗を経験したら、その過程を修正します。消化不良の眠れない夜を経験したら、ハラペーニョを避けます。

私たちの多くは、結果が他者からの罰を受けるという形になることも非常によく知られています。赤信号を横断すれば、罰金を支払う。子供が学校で行儀が悪ければ、校長が家庭を訪問して面談する。法律を破れば、刑務所に入る。年を重ねてきた私たちは、悪いことをして、両親にお尻ペンペンされたことを覚えているでしょう。これは若い頃の慣例みたいなものです。私たちは、結果、特に結果が罰となる社会の中に住んでいて、これが行動を変えるための最初の「主力」となる方法です。だからと言って、インコ・オウムの行動を変える必要がある時に、結果に焦点を合てるのは不思議だと思いませんか。もちろん、そうは思わないでしょう!それは慣れ親しんで、巧妙に提供される罰は、将来の問題行動を減らすのに役立つでしょう。さらには、欲求不満と怒りを和らげることができるので、罰を与える側は、良い気分だとしばしば感じるでしょう。
ただし、多くの問題は罰の使用から生じます。ポジティブパニッシュメント(正の罰)の結果には、恐怖または攻撃性のいずれかの表出が伴う、逃れたいという欲求が含まれる場合があります。その他の予期しない結果は、無気力になり、他の行動も抑制される可能性があります。ネガティブパニッシュメント(負の罰)の結果には、ストレスと欲求不満が含まれます。一般に、行動を罰するための行動を取ると、信頼が失われ、別の種類の問題が増加することがよくあります。(Chance、1999年)。私たちは、行動を変えるための主な戦術として、インコ・オウムを罰する立場になりたくありません。
応用行動分析
ありがたいことに、多くの問題行動を効果的に解決する、はるかに優れた方法があります。先行事象(あるいは先行条件:antecedents)を変えることで、問題行動を少なくし、望ましい行動をより頻繁に生じさせることができます。私はあなたを裏手のドアから、応用行動分析の家に招き入れました。応用行動分析(行動科学)は、行動を変化させるための体系的で科学的に証明された方法を提供してくれます。

Facebookやその他のソーシャルメディアサイトで見られる行動の提案のほとんどは、科学に基づいたものではないことに注意してください。ほとんどのアドバイスは、知識不足が招く悪い事態になることをはらんでいます。問題行動を「調べている」人は誰でも、アドバイスを提供している人の資格を問うべきです。対照的に、応用行動分析によって提供されるアプローチは、正しく実践されれば機能すると信頼できます。

特定の行動を修正する必要がある時は、3つのことだけに焦点を当てる必要があります。行動自体に加えて、先行事象と結果を調べます。もちろん、私たちは皆、結果に多く遭遇しています。結果とは、将来、ある行動の出現率に影響を与えるであろう、その行動の直後に発生する事象です。(Luescher, 2006年) 罰は、将来の特定の行動を減らす結果です。可能な場合は常に、はるかに優れた戦略は、望ましい結果の出現をサポートするために、先行事象を巧みに配置することです。
先行事象をベースとした介入
フリードマン、マーティン、ブリンカーによると、「先行事象とは、行動の直前にある刺激、事象、条件である。」と言っています。先行事象は、行動が発生するための段階を設定します。この行動は、先行事象が存在しないと発生しないのです。
行動を変化するために先行事象を変えることは、より倫理的で、多くの場合、行動を変えるためのよりシンプルで簡単な方法です。実際、とても簡単なので、そのような変更を提案すると、飼い主は少し懐疑的な目で私を見ます。物事はそんなに簡単なものではない、と彼らが考えていることは分かっています。先行事象を変える方法を用いて、望ましい行動を振る舞うように簡単に仕向けますし、望ましくない行動を振る舞うことを困難に、または不可能にすることができます。先行事象を変える方法を使用して、問題行動を減らし、新しい行動やなじみのない行動を実行する時に鳥が成功するように、例をいくつか見てみましょう。
問題行動を減らす
攻撃的・咬みつき
攻撃的な行動を改善する場合、先行事象を変えることは「最重要点」と言えます。
実例1:鳥が肩に止まっている時に、ある種の望ましくない行動が起こる。それは、もしかしたら、3年の間、肩に止まっていても何の問題もなかった鳥が、突然、咬むようになった。あるいは、もしかしたら、耳たぶを咬む、メガネを奪う、イヤリングをとるという行動かもしれません。

先行事象を変える:このケースの場合、お勧めの先行事象を変える内容はシンプルです。それは、ただ、あなたの肩に鳥を止まらせない、ということです。その代わり、あなたのそばにある止まり木に止まるように、強化子を頻繁に与えて教えます。これは、実のところ、あなたの肩にとまるよりも、鳥の生活の質を向上させることになるでしょう。それは、鳥の自立した行動、そして、強化子を得ることに関して鳥をコントロールすること、これら両方を促すことになります。
実例2:エサ入れを取りだそうとすると、あなためがけて突進してくる。
先行事象を変える:【Q1 】
実例3:本やタブレットを持っていると、鳥が飛んで来て手を攻撃する。
先行事象を変える:【Q2 】
実例4:手にステップアップさせようとすると咬む。
先行事象を変える:最初にご褒美(お気に入りの食べ物)を見せて、ステップアップしたら素早くご褒美をあげることで、強化していく。
雄叫び、あるいはその他の悩ましい音
実例1:あなたの鳥が、窓の外が見える位置に止まっていると、外で近所の人が何かをしているところを見ると、頻繁に雄叫びを上げる。
先行事象を変える:薄手のカーテンを購入し、雄叫びが気になる時は、カーテンを閉めておく。(薄手のカーテンなので)あなたはそれでも、騒音なしで、光は確保できるでしょう。
実例2:来客がある時、鳥がとても騒々しくなる。あなたはこの状況になることに気付いたかもしれませんが、お客様を動揺させ、あなた自身が楽しむことを難しくするかもしれない。
先行事象を変える:【Q3 】
例3:あなたが電話で話している時、鳥が雄叫びを上げる。
先行事象を変える:【Q4 】
実例4:あなたとあなたの配偶者が他の部屋で会話をしている時に雄叫びをあげる。これは、しばしば、鳥と人の内、どちらかがパートナーであると認識されていることによる結果である。この社会的関係性を解決するには、追加の対策が必要となる。
先行事象を変える:【Q5 】
望ましい行動を増やす
小型の鳥の食餌改善

セキセイインコ、オカメインコ、ラブバードなどの小型の鳥は、シードミックスを主食の定番としているのが一般的です。結局のところ、これは、ブリーダーまたはペットショップから、小さすぎるケージ、カトルボーン、そして中にベルが付いたプラスチックのおもちゃと共に、送られてきたものです。
このような鳥がいて、そのような食事の危険性に気付いた人の中には、ペレットや他の食餌に切り替えるのに苦労した人もいることでしょう。
先行事象を変える:初めての餌をエサ入れに入れて、鳥がいつも止まっている止まり木のすぐそばに取り付ける。餌がクチバシの真下にある時、鳥はより早くこれらの新しい餌を受け入れる可能性が高くなる。これは、エネルギー消費の観点から、新たな餌を食べることがより簡単であることを意味している。
中型以上の鳥に野菜を食べてもらう方法
ミックスシードを食べてきた多くのインコ・オウムは、通常、野菜とペレットの両方を食べることに抵抗します。一つには、これは新しいものを嫌う性質によるものです。もう一つは、高脂肪で炭水化物が豊富な食べ物に、自然に惹かれる傾向にあるからです。
先行事象を変える:鳥が、1日に食べるシードの量を量ります。これは重要です。最初に与える量がわからない場合は、減らすことができません。餌を与える前に、細かく刻んだ野菜に、同じ量のシードを混ぜます。鳥が野菜ミックスを食べ始めたら、日々、与えているシードの量を徐々に減らし始めます。ミックスシードを混ぜるのを止める頃には、鳥はペレット(与えている場合)と野菜の両方を食べ始めているでしょう。

先行事象を変える#2:ケージの上や遊び場など、異なる場所にペレットや野菜を置きます。この方法は食事を促すことが多く、その理由はわかりません。私がフルタイムで働いていた時、私の鳥はケージの中のペレットを無視していました。私が遊び場(プレイスタンド)に置いてみた時、鳥たちは熱心に食べ始めました。
おもちゃで遊ぶ
私は、多くの飼い主から、インコ・オウムがおもちゃで遊んでくれないと言う不平を聞きます。確かに、どんなエンリッチメントにも関わろうとしない鳥はいます。このような鳥は、おもちゃやフォージング(餌探し)の機会と関わりあいを持つように教えることができますが、これには一貫した集中的なトレーニングが必要です。おもちゃと遊ぶ鳥もいるかもしれませんが、それでも、難しすぎる、あるいは迷惑だと、遊ばない鳥もいます。たとえば、特定の鳥種のために販売されている多くの木製おもちゃは、実際には齧るには難しすぎます。木材自体が硬すぎるか、サイズが大きすぎます。おもちゃの製造業者は、鳥が15ドルのおもちゃを15分で破壊してしまうと、飼い主は面白くないという事実を理解しています。この課題は、鳥が興味を持つ種類のものは、彼らがすぐに破壊できるものであるという点です。
先行事象を変える:私のパンフレット、Parrot Enrichment Made Easyのデザインを使用して、家でおもちゃを作ってみてください。これには、紙、段ボール、布で作られたおもちゃに加えて、素早く簡単に齧ることができる木のおもちゃを作るためのアイディアも含まれています。
先行事象を変える#2:さらに、おもちゃやフォージングトイは、鳥がよくとまっている止まり木の近くに設置していることを確認してください。ケージの奥の方におもちゃが付けられていて、そこにはとまり木が見あたらないという状況を目にしたことがあります。私は、鳥が止まり木で快適に向きを変えることができず、後ろ向きにしかとまることができないほど、ケージの後ろに非常に近い位置にある止まり木の近くに取り付けられたおもちゃを見たことがあります。あなたがあなたの鳥だったとしたら、ケージに取り付けてあるおもちゃと簡単に遊ぶことができるかどうか、自問してみてください。鳥がおもちゃ類に簡単に触れることができる場所は、簡単に止まることができて、鳥が向きを変えても尾が当たらないようにしてください。

水浴びをしてもらう
もう1つのよくある不満は、水浴びをしてくれない大型の鳥に関するものです。大型の鳥は、たまに水が入ったお皿で水浴びするかもしれませんが、十分には濡れません。
先行事象を変える:多くの飼い主は、掃除機が作動している時、鳥が通常は水の入ったお皿の中で示すような、水浴びをする仕草をすることに気づいています。この奇妙な現象に驚嘆することに加えて、特に鳥がボトルを見ても怖がらない場合は、このタイミングをスプレーボトルから水を吹きかけるタイミングとして選択することもできます。そして、もしボトルを怖がるのであれば、キッチンタオルまたは段ボールでボトルを隠して、ノズルだけが見えるようにすることができます。
楽しい先行事象
あなたがアイディアを得られるように、私は非常にシンプルな問題に対する、非常にシンプルな先行事象を変える例を挙げてきました。プロセス全体が複雑になる可能性があり、通常はさらに複雑になりますが、ここからが面白いところです。ほとんどの場合、先行事象を変えることで、機能する可能性があるものがいくつかあります。したがって、問題があると特定したら、紙を用意して座って、可能な限り多くの自由な発想をしてみてください。たとえ可能性が低い、またはばかげているように見える場合でも。(ポジティブレインフォースメント(正の強化)を使用して、他の新しい行動を教える必要がある場合もありますが、少なくともこのような解決方法で、有利なスタートを切ることができます)
インコ・オウムが感じていることや考えていることを理解しようとすることにとらわれないように注意してください。代わりに、行動自体に焦点を当てるようにしてください。次に、最も効果的ではないかと思われる方法を、1週間ほど実践してみてください。どういう結果になるか、注意深く観察してください。その方法がうまくいっていないと思われる場合は、その次に可能性が高い方法を試してみてください。
私自身の事例を紹介しましょう。夜間に、筆毛を抜いてしまうある鳥がいます。ケージの底や、朝、ケージカバーをとった時に、羽根を抜いていることが観察されます。この鳥は、運動や多くのエンリッチメントに恵まれた素晴らしい環境の下、良い食事や飛ぶ機会を与えられた、完璧にバランスの取れた環境で暮らしている鳥です。
実行可能な先行事象の変更には、次のものがあります。
(1)就寝前に、より多くの食事をとらせる。
(2)就寝前に、より多くの運動を促す。
(3)ケージを完全にではなく部分的に覆う。
(4)夜間に、齧ることができるものをケージに入れる。
(5)鳥の就寝時間を少し遅くする。
この事例はまだ進行中です。羽毛の損傷は夜間にのみ発生しているため、病気のプロセスと関連している可能性があります。しかし、獣医の治療が完了したので、それでも先行事象を調べることは理にかなっていると言えます。
最後に
先行事象を変えることは、行動変化に対して、科学に基づいた、倫理的で効果的な方法を私たちに与えてくれます。多くのシンプルな問題は、これだけで解決できます。先行事象を変えることで、私たちが望ましいと思う行動を促すことで、鳥をそのように導くことができます。

ポジティブレインフォースメント(正の強化)や先行事象を変える方法のように、科学的に証明されているすべての行動原則は、人間にも有効です。これはすべての種の系統にわたって有効です。おそらく、インコ・オウムと接する時、私たちがすぐに罰に行き着くのは、私たちの社会が、私たちの子供や他の人と接する時に、ほとんど専ら罰を使うからです。自分の子供が幼かったのは、遠い昔のことです。私は運が良かったので、1992年に出版されたFitzhugh Dodson博士の本「愛をもって訓練する方法:ベビーベッドから大学まで(How to Discipline with Love: From Crib to College)」に出会いました。Fitzhughが指摘するように、アメリカ中の親たちは子供たちに悪い振る舞いを教えてしまっています。親たちは、子らが良い行動をしている時、通常は必至に何かを成し遂げようとしている時は無視し、その代り、子どもが悪いこと(食料品店で癇癪を起したり、兄弟とケンカしたり、寝たがらなかったり)をした時に注意(強化)します。
Fitzhughは、私たちが行動をどのように変えることができるかについて、明確な指示を示しています。私たちは皆、COVID-19(新型コロナウィルス)の影響で、出歩くことができない状況、身体的または感情的な孤立、不安に苦しんでいる今、鳥や子ども、他の家族を相手に、先行事象を変えることやポジティブレインフォースメント(正の強化)の両方を実践し始めるのに、今より良い時間はありません。「彼ら」は、これがすべて終わると、物事は同じではなくなると言うでしょう。これは、私たち全員にメリットがあると考えている変化の1つなのです。
参照:
Chance, Paul. Learning and Behavior. Pacific Grove: Brooks/Cole Publishing Company, 1999
Friedman, S. G. (2009). “Behavior fundamentals: Filling the behavior-change toolbox.” Journal of Applied Companion Animal Behavior, 3(1), 36–40.
http://www.behaviorworks.org/files/journals/Behavior%20Fundamentals%20JACAB.pdf
Friedman, S.G. (2008) “10 Things Your Parrot Wants You to Know About Behavior.” Psittacine Magazine, May 2008. Pgs 14-16.
http://www.behaviorworks.org/files/articles/10%20Things%20Your%20Parrots%20Want%20You%20to%20Know.pdf
Friedman, S. G. (2001) “The ABCs of Behavior.” Original Flying Machine, Issue 9: Nov-Dec, 2001.
http://www.behaviorworks.org/files/articles/ABCs%20of%20Behavior%202004.pdf
Luescher, Andrew. The Manual of Parrot Behavior. Ames: Blackwell Publishing, 2006. Chapter 14: Friedman, S.G., Martin, Steve, Brinker, Bobbie. “Behavior Analysis and Parrot Learning.” Pg. 147-163.
McGuire, L. (2015) “The Parrot That Screams.” Psittacine Magazine. Pgs 10-11.
http://www.behaviorworks.org/files/offshoots/Parrot%20that%20Screams%20-%20WPT%20PS%20Summer%202015.pdf