スタート地点を探ったら
ご家族の中で鳥さんの態度がガラリと変わってしまうケースについて、vol.1ではまずはスタート地点を確認するための項目をご紹介いたしました。
あてはまる項目はありましたでしょうか。
鳥さんはどうしても好きな人にランキングをつける傾向にあるなというのは否めませんが、これイコール上下関係を決めているという意味ではありません。No.1、No.2、No.3と好きな人ランキングや、あるいはNo.1の人には許さないけどNo.3の人には許す行動があるなど、鳥さんはよく人を見てるな~と思わされることがしばしばあるのではないでしょうか。オンリーワンではないこういう関係性はこの先も安心できるかなと思います。
一方で、No.1の人とNo.2以下の人の差があまりにも激しくなるとオンリーワンになってしまい、No.1の人がいなかったらゴハンも食べられなくなる、元気がなくなるくらいの差があると、No.1の人に万が一のことがあった場合、鳥さんには大きなストレスがかかってしまう恐れがあるので、この差を縮めるアプローチは必要かなと思っています。まして、No.2以下の人に普段から攻撃的な行動を見せる場合はなおさらです。
実際のアプローチ法に入る前に、なぜ今の行動が形作られたのかについて振り返ってみることも必要だと思います。
①毎日お世話しているのは自分なのに、一番馴れているのはお世話をしない人なのはなぜ!?
②ヒナの頃はあんなに何しても怒らなかったのに…、なぜ今は??
というお気持ち、よくわかります!
鳥さんの今の行動は過去の経験から獲得した結果であると言われています。と言われても思い当たることがない場合もあるかもしれません。この答えに気付ける人もいらっしゃるかもしれません。本当の答えは鳥さんにしかわからないことではありますが、上記2点について考えられる原因をご紹介いたします。
1. お世話をしていない人になぜ懐く??
鳥さんによっても、ご家庭によってもケースは様々で、お世話をしている人に一番懐いている場合もありますし、これとは逆に、一切お世話をしていない人に一番懐いていて、お世話をしている人はランキングが低い…というケースもあります。
一つ言えるのは、鳥さんの好みということはもちろんありえます。ただただ何をされてもこの人が好き!第一印象から決めていました!のような感じでしょうか。これまでの事例でいいますと、高い声の人よりも低い声の人の方が好きなんだなということが分かったり(逆のパターンもあります)、お迎えする前の環境で、男性と接することが多かった鳥さんは男性を好み、女性にお世話をしてもらっていたら女性の方を好むというケースもあります。意外に思われるかもしれませんが、鳥さんがオスだから女性が好き!メスだから男性が好き!という理由付けはあまりあてはまらないのかなと感じています。
そして、いつもお世話をするからこその落とし穴も見逃せません。鳥さんと接している時間が長い分、鳥さんにとって嬉しい楽しいことを共有する機会が多いのはもちろんですが、場合によっては鳥さんにとってイヤな経験の回数が増える機会も数多くあるからです。信頼貯金(Susan Friedman博士の言葉を拝借)の機会も多ければ、その反対の不信貯金(これは今勝手に作りました)の機会も多くなることに。
この「鳥さんにとって」というのがポイントです。
事例をあげていくと、毎日のお世話の中で・・・
●無意識に”ガン!”とケージに手が当たってしまい、それがイヤな経験になった。イヤが積み重なった。
⇒鳥さん「なんかガン!ってケージをたたかれた!びっくりした!もういや!」
●エサを変える。おもちゃを取り換える。
⇒鳥さん「好きなものをいつもとっていくのはなんで!信じられない!もういや!」
●ケージ内に手を入れて拭き掃除。
⇒鳥さん「イヤだって言ってるのになんでそういうことするの??もういや!」
以上のようなことが積み重なって、結果的にお世話を何もしない人に懐くという状況になっているのかなと感じるケースもあります。
お世話をしない方がいいのかと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。上記はすべてに当てはまるという訳でもありませんし、上記に加えてさらにほかにも理由があるケースがほとんどです。人から見たらその場ではなかなか気付けませんし、鳥さんの気持ちはわからないので難しいところですが、鳥さんの気持ちに近づける方法はボディランゲージを観察することで今こういう気持ちを伝えているんだねというのは気付いていけるかもしれません。
2. ヒナの頃から豹変
ヒナの頃は全然咬まなかったのに、、、というご相談は本当に多く、飼い主さんは「なぜ?」という気持ちでいっぱいかと思います。代表的な原因として、もし1才頃に鳥さんの行動が変わったと感じる場合、鳥さんの心の成長が関係しているかと思われます。1才くらいまでは何をしても受け入れていたとしても、1才頃を境に鳥さんの自我が芽生えていろいろな物が見え始める時期です。よく「反抗期」という言葉が使われますが、反抗しているというよりも、独立独歩の時期で自分の意思を伝えてくれるようになったという方がしっくりくる気がします。この時期に、今まで受け入れていたことでも鳥さんが嫌がる行動を見せた時に、その気持ちを表すボディランゲージに気づけなかったり、あるいは気づけたとしても鳥さんからのメッセージを無視して飼い主さんの行動を押し付けてしまうと、鳥さんとの信頼関係が崩れてしまう結果になりがちです。
オカメインコさんにこのテの内容のご相談が多いのはなぜだろうと考えた時に、オカメインコさんとしては精一杯「イヤ!フッ!」と伝えているのにもかかわらず、あのお顔なので、怒った顔がかわいい!とかえってイヤなことを継続してしまうからなのかなと思っています。
この結果、挿し餌から育てたのにどうして自分には懐かないんだろうということになる場合もあります。一旦信頼関係が崩れてしまった場合、立て直すのには時間がかかります。
No.1の人の協力も必要不可欠
トレーニングは、当人が行うことが鉄則です。そしてこの場合、No.1の地位にいる人の協力も必要となります。今の鳥さんの行動は過去の経験から獲得した結果であるとお伝えしました。鳥さんにとってメリットがあると感じた経験は、鳥さんは繰り返し行動します。
例えば、No.2の人を咬んだり攻撃した直後に・・・
1)No.1の人が助けにかけつける。
2)No.1の人が笑う。
3)No.1の人からの「ダメよー」や「ぴーちゃん!」などの声掛け。
実はこのような行動が鳥さんにとっては、こうしたらいいことがあった!と学習してしまうこともあります。この結果、No.2の人を咬めば、No.1の人が(1)来てくれる♪、(2)反応がある♪、(3)話しかけてくれる♪からの「よしもっとやろう!」となるのはとても理にかなっているのではないでしょうか。
今回は、ここまでです。
上記以外でも、鳥さんが特定の人をパートナーだと認識している場合、それ以外の人がライバルとなり追い払おうとするケースもあります。この場合、パートナーと認定されている人は、鳥さんとの接し方の見直しが必要となります。
次回vol.3は、ケースごとの改善策をご紹介していきます。