(2021年2月23日 Allopreenのブログからお引越し)
Pamela Clarkさん(獣医師、行動コンサルタント)よりご承諾いただき、Pamelaさんの記事を翻訳させていただいています。
Pamelaさんの記事を通じて、各ご家庭での環境や生活リズムの中で、様々な性格の鳥さんたちにとって何が最適な暮らしであり、どうやったら鳥さんのQOL(生活の質)をあげられるのか、ご参考にしていただきながら各ご家庭で応用していただけましたら幸いです。
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『羽毛損傷行動の危険因子』 2020.01.16
去年(2020年)の夏、スーザン・G・フリードマン博士が講演するコントロール(制御)に関する話を聴講する機会がありました。フリードマン博士が言わなければならなかったことは、私の考え方を吹き飛ばしました。そして、私は、その時提示されたアイディアに今も興奮し続けています。私が聞いたことが新しいというだけでなく、それらが真実として私の中で反響したからです。
フリードマン博士が言わなければならなかったことを言い換えると:
行動とは、私たちが結果をコントロールする(制御する)方法です。私たちが行動する時、私たちは強化子(私たちが大切にしているもの)に近づき、嫌悪物(私たちが避けたいもの)から逃れることができるように環境を動かします。
私たちや動物が行動を起こす時、それは川に石を投げ込むようなものです。そこには波紋ができます。私たちが行動する時に、環境に影響を与えない方法がないのと同じように、石を投げ入れた時に波紋ができない方法はありません。
学習は私たちが生まれながらに行うものであり、学習する能力は自然選択の産物です。私たちの結果をコントロールするのは、私たちの本質にあるのです。したがって、コントロールの必要性は生物学の一部です。コントロールするには生物学的な必要性があります。それゆえに、コントロールは食べ物や水のように、インコ・オウムの生活の質に不可欠な第一の強化子と言えます。
コントロール(制御)は生物学的ニーズ
私たちは、すべての動物が選択をすることによってコントロール(制御)を行うことを知っています。私は何年もの間、インコ・オウムができる選択肢の数を増やすことによって、鳥たちの生活の質を高めていると主張してきました。
Lauren A. Leottiと彼女の共著者は、この考えを拡張し、次のように述べています。「環境をコントロールし、望ましい結果を生み出す能力を信じることは、個人の幸福に不可欠です。知覚制御(視覚制御)は望ましいだけでなく、心理的および生物学的必要性である可能性が高いと繰り返し主張されてきました。」さらに「選択の制限は嫌悪的である」と述べています。(Leotti、2010年)
コントロール(制御)欠如は嫌悪的
これは嫌悪的であるだけでなく、学習性無力感の状態をもたらす可能性もあります。学習性無力感とは、動物が選択をしようとする行動さえも止めてしまう状態のことです。インコ・オウムを「パーチポテト(止まり木にじっととまっている状態)」と描写したことはこれまで何回あったでしょうか?パーチポテトとは、学習性無力感を明示しているのです。
この考えを拡張して、彼らは次のように書いています。「しかしながら、他のストレッサーがない中で、選択肢を取り除くことは、それ自体、非常にストレスになる可能性があります。行動の制限、特に種によって高く価値ある行動とされるものは、行動的、およびストレスの生理学的症状に寄与することがわかっています。飼養下における嫌悪効果は、自然環境で実行できることと比較して、行動の選択がどの程度減少したか次第であるようです。」 (Leotti、2010年)
新たな認識

過去数年で、私は、インコ・オウムの飼育方法を新しい視点で見るようになりました。私たちは羽根が生えた生命体を捕獲し、彼らの翼をクリッピングしてケージに入れました。多くのインコ・オウムは、すべての時間をケージの中で過ごすか、せいぜい1日1〜2時間、ケージの外で過ごします。私たちは彼らの自由、つまり選択する機会を得るためには不可欠な自由を奪ってしまいました。
同様の方法で犬を飼い、犬が自由に動くことができず、毎日22時間犬小屋の中で飼うと虐待と見なされます。しかし、これらの慣行はインコ・オウムの世界ではまだ一般的であり、問題になることはめったにありません。これらの慣行は長い間、通常通り受け入れられてきたため、不適切であると判断することはできないようです。
社会通念の問題
この説明は、一般通念と呼ばれる現象にあります。世間一般の通年とは、人々にとって便利で快適な信念の集まりであり、これらの信念を損なうかもしれない事実を認めようとしないものです。(ウィキペディア、2019)私は誰かが「信念はアイディアへの感情的なコミットメントである。あなたが信念を持った途端、あなたに届くどんな情報に関しても、現実から目を背け、自動的に反対の方向に否定してしまう。」と言うのを聞いたことがあります。
コンパニオンバードに関しては、私たちの常識が彼らに害を及ぼしています。フリードマン博士はプレゼンテーションの中で、「コントロール(制御)の欠如は羽毛に損傷を与える行動の重大な危険因子です」と述べました。私はこれに全く同感でした。
(Peter Hitchens より引用)
「社会通念は、常に常に誤っている」
羽毛損傷行動
私は1996年以来、鳥が羽を傷つけている飼い主を支援することに特化しており、その原因についてかなりの考えを持っています。私が数年前にWorld Parrot Trustの記事にまとめた非医学的原因のリストは、次のようなものでした。
(1)不適切な食事
(2)慢性的なストレスまたは不安
(3)発情の増加
(4)退屈につながる独立した遊びの欠如、または飼い主への過度の依存
(5)不適当な水浴びの機会
(6)十分な休息の欠如
(7)不十分な運動
(8)学習および選択を行うための不十分な機会
(9)採食やその他の「発見」の機会の欠如
(10)新鮮な空気や日光に触れる機会の欠如
(11)羽への付着物、またはタバコの煙などの有毒物質への暴露
今日、私のリストは次の通りです:
•特に自然な行動(採食、フライト、水浴び、問題解決、新鮮な空気と太陽の光を楽しむこと)にかかる選択の機会の欠如に起因する慢性的なストレス、および全体的な自由とコントロール(制御)の欠如
•不適切な食事
•発情頻度の増加
•幼鳥期の不十分な飼育条件
私はこの1年、私の新しい見解を支持しているように思える2つの経験をしました。私が20年近く前に育てた2羽のメスのヨウムは、新たな飼い主を探す必要がありました。1羽は私の元に戻ってきて、もう1羽は私のクライアントの元に引き取られました。2羽のヨウムは、以前は本当に良い家を楽しんでいました。大きなケージを用意され、飛び回り、栄養のある食事を食べ、たくさんのエンリッチメントに触れ、そして屋外の鳥小屋に行く機会もありました。しかし、家を変わってからは、2羽とも、ケージの中であまりにも多くの時間を過ごしていました。
どちらも、引き取られた時点で、胴体に大きな毛引きをしていました。現在、2羽とも完全に羽根が生えそろっています。ヨウムたちの現在の家にもケージはありますが、ヨウムたちははるかに自由を享受しており、その結果、指数関数的な速度で選択を行うことができています。どちらの鳥も、優れた初期飼育体験と、最初の家は素晴らしかったという利点がありました。新しい家で大きく異なっていた要因の1つは、選択肢の管理を強化したことのようです。
(画像:新しい環境の内の一つ)
非倫理的な慣行は私たちにも害を及ぼす
上記を考えると、私たちがインコ・オウムを飼う典型的な方法は、彼らの身体的および心理的健康を破壊することは明らかです。しかし、それは私たちにも害を及ぼしています。
私たちは、私たち自身の行動からどのように害を受けているのでしょうか?選択して動き回ったり、飛んだりする能力を飼養下のインコ・オウムから奪うことは、倫理的な要素があることを私たちは認識できていません。そうであるなら、私たちは前向きな自己イメージを維持しながら、非倫理的に行動することができるのです。
しかし、あるレベルで不快と感じる人はたくさんいます。かなりの数のクライアントが、インコ・オウムがケージの中で暮らしていて、学習性無力感と一致する行動を示している様子につらい思いをしていることを私に打ち明けたことがあります。これにはアクションが必要です。
実行可能な変化
従来の常識は変化に抵抗します。では、どうすれば始められるのでしょうか?どこから始めたらいいのでしょうか?
大きなアクションは失敗する傾向にあります。ケージの使用を止めたり、鳥たちをすべて「野生に」解放したりすることは現実的ではありません。これは複雑なテーマであり、行動はその研究です。これは私たちと私たちの鳥の両方に当てはまります。ある家でできることは、別の家ではできないかもしれません。
しかし、Kurtycaが示唆しているように、「…おそらく飼養下の範囲内で選択肢を提供することによって、環境のすべての側面を完全にコントロール(制御)することはできませんが、ある程度のコントロール(制御)を与えることで、彼らの幸福を高めることはできます。」 (Kurtycz、2015年)
「飼養下での推定されるストレスの原因の1つは、典型的な種の行動への障害、あるいは妨げです。この典型的な行動とは「行動上の必要性」と思われるものです。」(Morgan、2006)。
典型的な種の行動
ここから、私たちの取り組みを始めるのにはいいかもしれません。インコ・オウムの典型的な種の行動には、フライト、採食と問題解決、社会的交流、高い位置にとまる、木やその他の素材を齧る、水浴び、自然環境との相互作用、そしてパートナーを作りヒナを育てることが含まれます。
これは、一方では、私たちが、家で暮らすコンパニオンバードに働き掛けができていなかった、とっておきのことです。私たちが過去にそうしたとき、ほとんどの場合、結果は悲惨なものに終わりました。
フライト
私が何度も議論してきたように、絶対に必要な場合を除いて、そして確かに人間の便宜のためではない限り、翼をクリッピングしてはいけません。代わりに、家庭環境や私たち自身の行動が、鳥たちが飛ぶことをサポートするために修正されなければなりません。
採食(フォージング)とその他エンリッチメント
インコ・オウムが若い時期に餌を探すことを学ばなかった場合、鳥は隠された食べ物の概念を理解できていません。このことからこれを辛抱強く教える必要があります。その他のエンリッチメントに関しては、布、ヤシの葉のおもちゃ、齧りやすい木材、段ボールや紙、ベルなど、さまざまな齧ることができるアイテムを与えます。インコ・オウムは、相互作用できるアイテムを選択できるようになると、環境を少しコントロール(制御)できるようになります。
自然な環境
インコ・オウムが自然環境を楽しむことができる屋外の安全な空間を用意することは、もはや任意的なことではありません。「安全」という言葉に斜体を使用していることに注意してください。
鳥を屋外にあるキャリーやケージに入れることに問題があるので、そうしました。インコ・オウムは捕食者に見つかった場合に、逃げ場がないことを認識することから、これらの小さなサイズの入れ物はストレスを引き起こす可能性があります。捕食者がケージバーの隙間から、中にいる鳥に触れることができる可能性もあります。どちらも厳重な監視の下でのみ使用する必要があります。
もちろん、鳥小屋は理想的です。ただし、これが不可能な場合は、他の方法を検討する必要があります。自然の日光とそよ風の刺激は、良好な心理的健康を促進するだけでなく、日光に当たることで良好な身体的健康を促進します。
社会的つながり
私たちが鳥たちのボディーランゲージを注意深く観察して、もう少し距離をおいてほしいという鳥からのサインを読み解き距離をおくことで、私たちは飼養下の鳥に、鳥の社会的相互作用に対するより大きな制御(コントロール)を提供することができます。複数の異なる種の鳥たちが一緒に暮らしている場合、ケージの間に十分なスペースをあけることで、鳥たちのストレスを減らすことができます。
また、鳥を1羽で飼う習慣に疑問を投げかけることもあるかもしれません。鳥は群れをなす生き物であり、私たちや他のペットを群れのメンバーと見なすのに十分な柔軟性があるかもしれませんが、1羽のオウムが他の鳥から恩恵を受けることはよくあります。ただし、必要な場合を除いて、誰もが鳥をもう1羽お迎えするべきではありません。
高い所に行く選択肢

鳥がより安全であると感じる場所となる高いところにとまることを許容することで、鳥のコントロール(制御)の認識を高めることができます。天井にぶら下げられる止まり木を設置することによってこの状況を与えることができます。
フンで汚される箇所に敷物を敷くようにします。そして、合図を出すと、高いところから飼い主の手元まで下りてきてくれるように教えることで、確実に鳥を回収することができるでしょう。
トレーニングはコントロールを与える
インコ・オウムにコントロール(制御)を取り戻すことができる最善の方法の1つは、飼い主がトレーナーとなり、強化子を獲得する機会を頻繁に与えることです。ポジティブレインフォースメント(正の強化)トレーニングは、行動変化の究極のスタンダードです。それはエンリッチメントを提供し、私たちの生活を楽にして、私たちがボディーランゲージを読み解くことを学ぶ手助けになります。
インコ・オウムをトレーニングする理由はたくさんあります。しかし、最大の理由は、トレーニングがインコ・オウムにコントロール(制御)の感覚を与える点です。鳥は自分が望むものに近づく権利をコントロール(制御)できます。
ここに、手始めに取り組めるいくつかのことをご紹介します。
・ターゲティングなどの明確な行動から教え始める。
・手がかりとなるすべての行動に対して、鳥に強化子(好きな食べ物を砕いた状態)を与える。
・SMART x 50アプローチを用いて、望ましい行動を促す。
犬向けに公開されていますが、これはインコ・オウムの行動に簡単に適用できます。SMARTは、See(見る・確かめる・調べる・理解する)、Mark(マーク(印)をつける) And(そして) Reward Training(ご褒美トレーニング)の頭文字です。数字の50は、1日に50個の強化子を与えるという目標を表しています。(いくつかの健康的な選択を考慮に入れることができない限り、この量はインコ・オウムにとって過剰かもしれません。)
SMART x 50
このプログラムは、インコ・オウムが日常的に振る舞う望ましい行動に関して、飼い主がそれを認識する習慣を身につけることを奨励するものです。これは、すべての鳥が一日の間にすでに多くの望ましい行動を実行し、その過程でこれらを強化し、鳥の生活の質を高めることができるということを想定しています。
手順は次のとおりです。
•非常に小さい(松の実の1/2以下のサイズ)、望ましいご褒美を50個用意します。
•簡単に取り出せるように、これらをポケットまたは小さな容器に入れてください。
•インコ・オウムがかわいいまたは望ましい行動をしているのを見たり聞いたりしたときは、(例:望ましい音、歌、エンリッチメントとの相互作用、「ステップアップ」などの反応に対する合図)「Yes!(そう!)」などの1つの明確な単語でこれをマークします。
•ご褒美を与えます。
•1日に最大50個のご褒美を使用しますが、仮に10個だったとしても問題ありません。
これを使用することで、私がかかわったすべての動物に明確な変化を見てきました。動物たちは、よりインタラクティブ(双方向)で熱狂的に振る舞うようになります。そして、動物がいくつかの新しい行動を放り出し始めても驚かないでください。それらが何かに発展していくかどうかだけに着目してください。
次の10年
Jacques Devalはかつて次のように書いています。
「神は鳥を愛し、木を発明した。人は鳥を愛し、ケージを発明した。」と。
事実ですが、これは恐ろしい小さな引用句だと思います。おそらく、彼の言葉が真実だから、そう感じているのでしょう。次の10年でこの言葉が偽りに置き換えられるように、私たちのインコ・オウムにとってより多くの自由とコントロール(制御)を可能にする実践に努めていきましょう。私たち一人一人は、一度に1つの合理的で実行可能な一歩を踏み出すことができます。
参照:
Kurtycz, Laura M. (2015) “Choice and Control for Animals in Captivity.” The British Psychological Society, The Psychologist.28: 892-895https://thepsychologist.bps.org.uk/volume-28/november-2015/choice-and-control-animals-captivity
Leotti, Lauren A., Iyengar, Sheena S., Ochsner, Kevin N. (2010) “Born to Choose: The Origine and Value of the Need for Control.” Trends in Cognitive Sciences. 14.10: 457-463. https://doi.org/10.1016/j.tics.2010.08.001
Morgan, Kathleen N. and Tromborg, Chris. (2006). “Sources of Stress in Cativity.” Science Direct.102: 262-302. https://www.reed.edu/biology/professors/srenn/pages/teaching/2008_syllabus/2008_readings/1_MorganTromborg2008.pdf
Wikipedia contributors. (2019). Conventional wisdom. In Wikipedia, The Free Encyclopedia. Retrieved 21:18, January 13, 2020, from https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Conventional_wisdom&oldid=931490544