(2018年9月24日 Allopreenのブログからお引越し)
Pamela Clarkさんの「鳥の睡眠」に関する翻訳記事をご紹介させていただきました。この記事を受けて補足という形でこれまで受けたご相談で実際にあった事例をご紹介いたします。
Pamelaさんの記事にもありましたように、特に問題がなければ現在の睡眠環境は変える必要がないのかもしれません。何か気になることがあるのであれば、睡眠について見直した方がいいと書いてありましたね。それぞれの鳥さんに合わせて応用していくことが何よりも大切ではありますが、この「応用力」が実は難しい場合もあるのかなと感じています。ついつい「当たり前」になっていることが見落とされがちになる場合があるからです。
ここでは、過去のご相談事例を知っていただくことによって、より各ご家庭の鳥さんに応用できるヒントになっていただけたらと思いご紹介いたします。

継続した睡眠でなく、睡眠を途中で中断されてもこれに順応する能力はあるとは言え、知らず知らずに長い時間、睡眠を阻害していることもあります。
ここでは、夜間に毛引き、自咬を繰り返していた鳥さんのご相談で実際にあった状況と改善法を「睡眠」と寝る前の状況と朝起きてからの状況に絞ってご紹介いたします。
●ケージの置き場所が昼も夜もテレビのそば、電源が入りっぱなしの電化製品(FAX、プリンター)のそばにあるケースでは、人には気にならなくても鳥さんにとっては音や振動などが影響して、睡眠どころか安心して過ごせる場所ではなくなってしまう場合もあるようです。(中には平気な鳥さんもいるようです)
この場合は、ケージをこれらのものから離して様子を観ます。
この対策で、過去に毛引き、自咬の鳥さんに改善が観られたことが多々あります。
●ドアのそばに置いてあるケージで鳥さんが就寝した後のドアの開け閉めが鳥さんにとっては常にドキドキした状態にさせている場合もあるようです。
「暗い中で突然、ドアを開ける音だけが聞こえる!次はいつ!?眠れないっ!」
といった心境でしょうか。
緊張状態が継続して、途切れ途切れの睡眠さえも満足にできないとなると問題行動に発展することもあるようです。この場合もやはりケージの置き場所の見直しが必要となります。
●Pamelaさんの記事で、睡眠時間が長いことが毛引きの原因だというデータが紹介されていました。おそらくですが、まだ眠りに入るまでに時間がたっぷりあるけれど、ケージをカバーで覆われていると真っ暗で何もすることがない。手っ取り早く自分の羽根でもいじってみるか、という感じでしょうか。
この場合の対策が睡眠時間を調整してみるということになりますが、睡眠時間の長さを変えずに、夜にたっぷり眠れるように、昼間の活動を改善するという方法もあります。つまり、昼間にたくさん動いてもらって、夜は疲れ果てて眠るということです。
日中はケージの中でお留守番することが多い鳥さんにとって、昼間にたくさん動いてもらうとなると動きに制限があるので難しいとお考えになるかもしれませんが、「おもちゃ」や「フォージング」、「ケージ内レイアウトの変更」でいい刺激になります。鳥さんは思考することでもエネルギーを消費すると言われているので、鳥さんに頭を使ってもらう環境作りを与えていくと夜はぐっすり眠れるようです。
過去のご相談でケージの中では全く動かないという鳥さんはたくさん出会ってきましたが、これらのアプローチをすることで、夜間だけの毛引きを改善できたことがあります。
おもちゃで遊ぶこともフォージングに挑戦することも、まずは飼い主さんが簡単なことから教えてあげることが大切です。この学習していく過程も十分に思考する機会になっているので、「うちの鳥は遊ばない。。。」とあきらめずにぜひ少しずつ試していただけたらと思います。
●夜中にケージの中を覗かれることで「次はいつ除かれる!!??」と安心して眠りにつけないことが原因で夜中に自咬を繰り返していた鳥さんもいます。(もちろん、何回も覗かれても平気!な鳥さんもいます)飼い主さんの心理としては心配で様子を覗いていたそうで、自咬を始めてからはますます心配でケージの中を覗く回数が増えてしまい、鳥さんにとっても「おちおちゆっくり眠れない、、、」という負の連鎖に陥ってしまっていたようです。
この解決は、夜中に覗かないということで無事改善に至りました。
●①朝、飼い主さんの目覚まし時計の音で鳥さんも起きている⇒②ケージカバーをはずさない状態で飼い主さんが朝食や身支度を整える⇒③そしてケージカバーをはずす、という流れだったのですが、②の時間帯でいつも羽根を抜いているという鳥さんがいました。目を覚ましてもやることがないから自分の羽根でもいじっておくかっという感じでしょうか(鳥さんの気持ちは分かりませんが)。この鳥さんは、他の時間帯では全く羽根を抜かないということで、本当に朝のこの時間帯だけのようでした。(もしかしたら夜間も抜いていたかもしれません)
飼い主さんとの話し合いで、②の段階ですぐにケージカバーを取ると朝から鳴いてうるさい、、、ということでした。毛引きも困るけど、大きな鳴き声も困る、、、
試しに、目覚ましの音を変えてみますかという話になり、これまではけたたましくなるタイプの目覚ましだったのですが、優しい感じの音が鳴るタイプのものに変えてみたら毛引きが改善されました。鳥さんの気持ちは鳥さんにしか分からないのではっきりとした理由は知り得ることはできませんが、改善に至った理由を考えてみると、けたたましくなる目覚まし時計の音に驚いていたのかもしれません。何かを改善するには、考えられるありとあらゆる鳥さんを取り巻く環境を変えていくということはとても大切なアプローチです。こういう事例もあったということを知っておいていただけたらと思います。
●これは今となってははっきりとしたエビデンスがないのですが、10年ほど前に読んだ海外の記事で、「就寝前にフルーツを食べることで、鳥の血糖値が上がり眠れなくなって毛引きに至る場合もある」みたいなことが書かれていました。
このことを獣医師に確認したところ
⇒鳥はもともと血糖値が高い生き物だから、果物を食べて血糖値が上がるってことはないんじゃない?
との回答をいただきました。
そして、私のトレーニングのお師匠さまであるShaunaさんにも確認したら
⇒そんな記事は読んだことがないわね、でも一理あるかもしれない。なぜなら、野生下では鳥たちはだいたい日中に食事を済ませるでしょ、寝る直前に食べるような習慣はないし、長い年月をかけて身体の機能もそういう風にできていない。だから、寝る前のフルーツタイムが原因かどうかはわからないけど、必要はないかもね。野菜や果物は午前中にあげた方がいいかもね。
とのこと。
過去のご相談で、夜寝る前のフルーツタイムを習慣にしていた鳥さんがいました。ヨウムさんだったのですが、夜中にだけ毛引きをするとのことで試しにこの寝る前のフルーツタイムを止めてもらったら毛引きをしなくなったという経験があります。このヨウムさんだけでなく、他にも小型~大型の鳥さんにも試したことがありますが、改善に至ったケースもありました。(全く関係ないケースもありました)
ただし、昼間に頭を使ってもらうような取り組みも併用してもらっていたので、寝る前のフルーツタイムを止めたことがどの程度影響があったのかははっきり分からないというのが正直なところです。
でも、これまでのルーティンを変えてみるだけでも鳥さんには刺激になりますので、何かしらの問題行動があった場合、トレーニングも必要であれば行ってもらいますが、まずは環境の見直しに取り組んでいただくことが多々あります。
以上となります。
もし、睡眠環境の見直しをやっていこうかなと思っている方がいらっしゃいましたら、これらの事例も知っておいていただきつつ、その鳥さんにあったアプローチで見直しに取り組んでいっていただけたらと思います。